発想の転換!なぜ超断熱の長期優良住宅は窓に奥行きがあるのか?その2

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今の常識が10年後には非常識になる事はよくあります。
住宅でいえば本州での基礎断熱工法。
15年以上前から北海道で積極的に採用されていたこの工法。当時本州ではソーラーサーキット工法やエアサイクル工法という特殊方法と、当事務所みたいな高断熱高気密のマニアックな住宅会社しか採用されていませんでした。最近では高断熱高気密をそんなに知らなくても採用している会社がありますし、全国規模の大手ハウスメーカーも採用しております。
同じように、この外壁のサッシ周囲に枠のあるような住宅が多くなると思います。ただ県内ではまだオーブルデザインだけでしょう。

なぜ外壁の周囲に枠のような物がとりついているか?
それは、窓単体で取り換え可能な構造にしているからです。
住宅が高性能になればなるほど窓は重要な部位となり、求める性能維持期間が長くなります。先のブログで説明したとおり、当事務所の目指す気密性能は最終的には、パッシブハウスと同じ超高気密性(隙間相当面積で0.25~0.3cm2/m2)です。このくらいの性能になると、窓の気密性はとても重要です。とはいっても、引き違い窓がだめではありません。気密測定をしても超高気密住宅0.1cm2/m2くらいの家は、特に引き違いが少ない家ではありません。むしろ多い家です。9か所も大きい引き違いサッシがあっても隙間相当面積0.1cm2/m2になります。ですので最近の超気密住宅のサッシは引き違いでも問題ありません。

ではなぜ性能を高く求めるとサッシの取り換えが必要なのでしょう。

車を考えてみましょう。今の車は10年くらい乗っていても気密性が落ちたと感じられませんが、私みたいに20年くらい乗っていると(笑)、ドアの気密性を維持するパッキンが劣化し気密性がおち、走行中に外の音が聞こえやすくなります。パッキンはEPDMという超耐久反発性ゴムが使われており、これと同じような性格の素材がサッシのゴムに使われています。
また、可動性があるものはその部分に金属がつかわれている関係上、疲労破壊や酸化により、速い場合で20年遅い場合でも30年くらいでだめになります。ゴムがだめになればそこから隙間風が入ってきます。
更に、最近はペアガラスもしくはトリプルガラスを使っていますが、そのガラスに挟まれた気体の漏れ、抜けでガラス内結露します。こうなるとガラス部分の取り換えをしますが、20年もたてば、更に性能のよいサッシが販売されているはずですから、ガラスの取り換えよりサッシ全体の取り換えをしたほうが効果が高いのは明らかです(ペアガラスの保証は10年)。
つまり取り換えが、各々出てくるはずです。より多く使って窓はやはり早く劣化しますし、あまり使わないところは、劣化まで時間があるでしょう。つまりサッシ各々で取り換える時期が違うはずです。

さて、ここでお気づきの方もいらっしゃるようですが、今の施工方法では外壁や、内側の木枠を壊さないとサッシがはずせません。   となると外壁の一部を壊してはずすのですが、最近の外壁は、サイディングのタイル調であったり、特殊な形状の表面ですね。特に大手メーカーほど拘った形状です。そんな特殊な同じ表面の外壁が20年後もあると考える方は・・・いませんよね。あるはずがありません。そうなるとどういうことになるか?
一個サッシが交換で、その外壁全てやり返えですね。そうでなければカッコ悪いでしょう?
だから今の家は、サッシ交換などせず、どうせならといい、建て替えてしまうのです。すると統計上の日本の家の寿命30年はサッシから見てもちょうど交換時期なのです。
勿体ないですね。
すぐ建て替えられる人はまだ良いでしょうが、建て替えできない人は性能の悪くなった家に住み続けなければなりません。新築時は最高の気密性があったにも関わらず、20年後はサッシから隙間風が吹き込む・・・なんて事も考えられます。

実は築19年の拙宅では、その事例が出てきてます。当時気密性が最高性能オール樹脂サッシ開きタイプですが、パッキンの劣化や海の前ということで、ステンレス以外の枠に埋め込まれた金属からさびが出てきてます。この現象はある一個のサッシだけなのですが、これを変えるには外壁を剥がさなくてはなりません。一個のサッシのためせっかく数年前に木に張り替えたばかりの外壁なのに・・・。
それでも拙宅は外壁が木なので色違いは許せます。数年で同じく同化しますから。ここが無塗装の木の外壁の利点です。
ところがハウスメーカーのような特殊外壁の場合、全て貼り直しということが考えられます。そもそもサッシの取り替えを考えていなので、一部だけ外壁を切って貼るということは、防水処理上問題があるからです。ここでまとめです。

長期に対応する住宅の外部重要ポイントは

1.サッシ単体で交換できる構造(納まり)
2.シーリング修繕が家の中からできる

3.1.2ができなければ同じ外壁が20年後も入手可能なものである。

ということです。ハウスメーカーの宣伝であるように、外壁の寿命が長い事がそう重要ではありません。
住宅寿命が長い欧州は、外壁素材ががほとんど決まっているのですね。日本みたいに「石調サイディング」、「タイル調サイディング」など1年で変わる物はつかいません。あくまでも、木そのものや、漆喰などの左官、レンガ等です。
これら素材なら、一部直しでも違和感なく、また数十年でなくなる素材ではありませんから。

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