書きかけ途中ですので後日追記があります。
以前ご紹介しているこの本が、日本における所謂「高断熱、高気密」の建物の指南書です。特別の理由、及び実測などの客観的に評価できる裏付けがなければこの本に添ってQ値や建物の温熱の性能の評価をしなければなりません。勝手な解釈では評価できません。よく国で出版されるこういった本を無視して宣伝、議論されますがそれでは井戸端会議の枠をでません。気を付けたいと思います。
まず良く聞かれるQ値ですが・・・
建物の温熱評価は図1のとおり3つの方法がありその一つがQ値計算です(実測はほぼ不可能なので図面による計算が実質Q値です)。
基本はAとBの評価ですが、この方法は専門的知識を必要としますから、大凡で簡単に評価できるCの評価方法が主流です(オーブルデザインではBで行っています)。
家のパンフレットなどのではBの評価のQ値が使われております。この計算自体は単純ですが、設計図書を読み取るという専門的な作業があります。ですので専門家にしか評価できない難しさがあります。しかしこのBの熱損失係数でも夏期の温熱環境の評価には全熱交換型換気扇の湿気の回収が含まれておりません。一方年間冷暖房負荷は潜熱(湿気)も考慮し全熱交換型換気扇の夏期の優位性が考慮されますから、今後の地球環境を考えるとこちらが主流になる可能性が高いですね(当事務所は全熱交換型換気扇)。
まずおさらいですがQ値計算は
Q=家の外皮(床、土間含)から逃げる熱+換気で逃げる熱
Q値には換気による熱損失を含みます(図C)。
今日の本題ですが・・・
最近は熱交換型換気扇を使用する場合が多いですが、この場合は見かけの換気によって「換気で逃げる熱」の低減を換気回数で置き換えても良いとこの本では取り決めております。これは既に10年前からの基準で最近できた基準ではありません。
この図の中の計算値を見るとよくわかりますが、熱交換する事で損失を防ぐ事ができる熱よりも換気扇の動力にかかる熱(エネルギー)が多ければ、熱交換換気をする意味はありません。ですのでいかに消費電力が少ない換気扇を選ぶかが重要です。無論熱交換の効率が高い方が良い決まっておりますが、その為に消費電力が大きくなってしまっては意味がありません。
この時の消費電力は一時エネルギーに換算されて(電気でしたら効率が0.4程度)評価されます。
具体例を下にシミュレーションしました。
使ったソフトはQpex3.0
住宅の規模 125m2程度
Q値 0.9W/m2k以下の建物外皮性能(換気含まな性能数値)
24時間換気扇 | 仕様 | 消費電力W | 熱交換率(顕熱) | 見かけの換気回数 |
熱交換機器A | ダクトタイプ | 150 | 90% | 0.21回/時 |
熱交換機器B | 個別ダクトレス | 76 | 70% | 0.22回/時 |
見かけの換気回数はほぼ同じくなります。またこの数値は一時エネルギー源が根拠ですが、換気する室内の空気熱源がエアコンならその効率によって更に換気回数が差が無くなり、条件によっては逆転します。特に超高断熱住宅は太陽の日射熱である程度暖房をまかなうような関東地方であれば熱交換率より消費電力が最優先でしょう。熱交換率の比較より消費電力の比較の方が今後重要になると思います。このあたりはマニアでも見落としするところです。
※但しダーティーゾーンの換気方法、時間により見かけの換気回数が左右されます。
ダクトタイプの熱交換型換気扇のメリットは、
・音が静か
・集中型で機器が見えなく如何にも先進的
デメリットは
・消費電力が大きくなる
・メンテナンスリスクが大きい
ダクトレスの熱交換型換気扇のメリットは
・消費電力が小さくなる
・メンテナンスリスクが小さい
デメリット
・音が静かではない
・見た目がわるい
ですね。
当事務所「緑の家」SSプランの家の標準の換気方法はこのダクトレスの全熱交換型換気扇です。一応意匠系の事務所でもあるのに、見た目がおとる換気扇を標準とするのは・・・効率と意匠どちらかをとるなら、「効率」だからです。環境を考えた場合、効率=機能であり、現代建築(日本の建築も)の「機能=意匠」の信念に合致するからです。またダクトタイプはその隠蔽配管の煩雑による制約もデメリットです。
3年前のSSプランができるまでは熱交換無し換気でしたが、近年熱交換型でも消費電力がちいさくなり、Q値を高める(減らすこと)事が可能になりました。よってSSプランの家では熱交換型換気扇をチョイスしております。
その消費電力は19W/台、4台で76W(有効換気量は136m3/h)です。イニシャルコストは4.5万/台ですから20万/セット+ダーティーゾーン一時換気扇5万/セット=25万/件程度です。
さて良く話題となる個別換気システムのショートサーキットによる換気効率ですが、これは既に8~9年前の建築学会の論文集で多くの論文が発表されましたが、良く設計されたダクトタイプ換気に比べ若干劣るものの第三種換気より優れ実情問題ない効率レベルでした。この点は議論の必要が終了しているので後は見た目と音の問題だけです。
※換気効率(空気齢)のことはここ ここが詳しいです。