エアコンの実質値上げと同じ=ダウンサイジング

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こちらは先日行われた研修会の講師として説明したときの図です。

エアコンは年々性能が向上していると思っていませんか?

実はこの上のグラフが示す様に、定格COPは2008年から年々下がっております。

今や省エネの花形であるヒートポンプ機器。その中でもおなじみの家庭用ルームエアコンでは、2008年から定格COPが下がっております。これは2006年から新評価方法のAPFが導入されたので2008年くらいまでは、定格COPとAPFが同列表記されておりましたが、2008年くらいからカタログにはAPFが大きく表記され、定格COPは仕様表を詳しく見ないとわからないくらい目立たなく控えめになってきたからでしょう。

実は最近のエアコンは・・・

一昔前のエアコンをダウンサイジング

したものと思われます。

つまり2007年頃の6帖用エアコンで使用された部品(コンプレッサーなど)の仕様が今のエアコンの8~10帖用に採用されていると言う事です。

それを裏付ける様に・・・

最近発売されているルームエアコンで「寒冷地エアコン」と種類分けされたものが各社から発売されています。この寒冷地用のスペックを見てみると、

①定格COPが高い

②低温時の最大能力が高い

③同定格機種と比較して価格が大幅に高い

④室外機の底に融雪ヒーターが装備

という特徴があります。

④の室外機の底にヒーターがあることは大変よい事です。但しヒーターが頻繁に作動する様ではCOPは下がります。

②の低温時の最大能力が高い事も良いことでは・・・と言われる方もいらっしゃるとおもいますが、私は以前から申し上げているとおり、

「エアコンは1台の低温最大能力に期待するより、数台で分散して1台あたり能力を低く抑える方がCOPも高くなり、室内温度ムラもなくなるよ」

と申しております。

①から③をまとめて説明したのが2012年の3月に説明した↓のコピペのブログです。

とても良い分析(手前味噌)なので再びコピーします。以下はコピーペです

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エアコンのご質問がありましたが、画像でお答えする必要があったので急遽アップします。

質問
新潟市より寒冷地に住んでいます。
暖房手段はエアコンを考えており、特に床下エアコンに大変興味があります。
エアコンを選定する場合、寒冷地用のエアコンであればCOPもあまり低くならず、1台で集中運転できるようにも思えるのですが如何でしょう?
寒冷地用のエアコンは通常のエアコンと比べ費用が高いのは承知しております。

 

まず寒冷地エアコンの一例として、

パナのフル暖 8帖用CS-RX250C2です(上に仕様表)。

スペック表で大事なところは暖房の外気2度時の能力と最大消費電力(赤丸)。

外気2度時 6kw

最大消費電力2.32Kw

この二つから外気温2度時のCOPがわかります。6/2.32=2.58←COP

次に一般地用高性能エアコン パナの6帖用CS-X222Cは下の表

この表から

外気2度時 4.5kw

最大消費電力1.48Kw

この二つから外気温2度時のCOPがわかります。4.5/1.48=3.04←COP

2.58:3.04 → 1:1.18 つまり18%一般用エアコンが良い

エアコンのCOP特性はこのまま外衣気温が下がると直線で下がりますから、外気-7度の時もおなじCOPの差が付きます。

一方、標準能力として一般用は暖房COP5.95に対し、寒冷地用は6.67と1.12倍も大きいので、ここが悩ましいところです。つまり標準で使えば寒冷地用が優れていると言うことです。このCOP数値は数年前の高性能エアコンのセッティングと同じで大変好感が持てます。

寒冷地用は消費電力を2.32KWまで使う事で外気温2度時の能力が1.33倍もあります。同じ帖数のCS-X252Cの外気2度の能力4.7KWと比較しても1.27倍もあることが分ります。つまり簡単に申し上げると寒冷地用エアコン8帖用は、消費電力をアップさせ12~14帖用程度のエアコンを8帖用として販売していると理解してもよいと思いますし、COPの山を8帖用としては高い出力部分をフォーカスとしてとらえているのでしょうね。

悩みますが結論は・・・
私のお勧めは寒冷地エアコン1台つけるより一般用エアコンを2台つける事でしょうか?寒冷地での床下エアコンは標準能力より大きな出力で運用することが多い事と、2台の方がムラがなく、またCOPが高い方が電気代は安くなりますし一般用なら価格は安いでしょう。後は2台対1台のイニシャルコストの差で寒冷地用を選ぶ選択肢もあります。

蛇足ですが・・・

一番大事なことは室外機の設置方法で屋根があり、雪がつきにくいようにする事が肝心です。他機種ではもしかしたら違う寒冷地対策があるかもしれませんが、まずはスペックでCOPと最大暖房能力・消費電力を比較してください。

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コピーペはここまで。

最近のエアコンはAPF評価になったため、暖房負荷と累積時間がとても大事になります。

6帖用エアコンの1時間あたり暖房負荷と累積時間。条件はQ値2.7で14帖を暖房(つまりQ値5.5くらいで6帖を暖房と近い負荷)

上のグラフは日々発生する暖房負荷に累積時間を掛けると年間の累積負荷ゾーンが明らかにしており、この例のように定格出力の中間に負荷のピークがくるので、中間の負荷に高COPになるように改良されていると思います。それを証明する様に・・・

出展:住吉・萩野・三浦・細井・澤地らのルームエアコンの実働評価実験から2013年 

上の図は最新のエアコンの論文ですがCOPのピークは最大出力の20%~30%にきております。つまり定格出力の半分くらいの負荷で同じ結果となっています。

上のところから、

最近のエアコンは、例えば2008年頃の6帖用エアコンの圧縮機容量やセッテイングを今の10帖に移植するとAPFが上がる傾向があるので、そのような開発方針になっていると思います。よって元々6帖用エアコンの機器設定のため10帖用の定格付近ではCOPが落ち、定格中間付近のCOPが上がっている・・・結果APFは良くなるということでしょう。

これは誰にもわからない機器のダウンサイジングで実質エアコンの値上げと言う事でしょうか(笑)。

さて、これからこのような過去の手法での性能アップはほぼ尽きたので、今後は新たな方法で性能アップが必要と思われます。家電メーカーの技術者に期待を寄せたいところです。

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コメント

  1. マロンチョ より:

    マロンチョです。アドバイス有難うございました。
    10帖以上のAPFが一番良いエアコンを2台設置しようと思います。
    これからもサイト見せていただきます^^

  2. オーブルデザインの浅間 より:

    マロンチョ様
     コメントありがとうございます。
    結論から申しますと、予算の範囲内でカタログ表記の帖数(18帖とか)以上の中から、一番良い「APF」のエアコンを買うことをお勧めします。もし積雪もある地域ならコスト高ですが寒冷地仕様のエアコンもご検討下さい。
    理由は、私は全室空調(暖房)時のエアコンしか実体験がなく、個別空調(暖房)ですと、24時間運転もされないことでしょうから、所謂普通の使い方です。この時は、カタログ表記のメーカー推奨の大きさ以上(寒冷地のため)を選ばれる事をお勧めします。他の選択としては18帖なら最低10帖用エアコン2台のほうが良いかもしれません。
    アドバイスとして些か普通で申し訳ありません。

  3. マロンチョ より:

    初めまして、家電が好きな宮城県北のマロンチョといいます。エアコンの疑問はこのサイトで解決させてもらってます。う~んマニアック&難しくてついていけない^^;どうしても悩んで決められないのでメールしました。来月に新築の戸建てが出来るのですがエアコンで悩んでいます。在来工法木造2階建て37坪、部屋は、1階は18LDKと仕切り戸続きの6畳和室。2階は3部屋10・7・7畳です。c値?は1~2程度と思われます。その他不明です。エアコン暖房がほぼ無い地域ですが、挑戦したいのです^^全館空調が理想ですが、;LDKだけを考えています。1台10万円程を基準に日立と三菱電機の冷・暖=4・5kwの機種2台の設置を考えています。富士通も安くなれば考えたいのですが・・(小さい富士通を使用して暖房能力高いと感じたため)。このLDKにこのクラスのエアコンでは暖房能力が高く無駄でしょうか?冷房時の湿度低下も少ないでしょうか?(温度低下だけ?)当方暑がりの汗かきなのに冬場の暖房も考えると悩んでしまいます。マニア目線からのアドバイスをお願いいたします。m(_ _)m