浴槽(バスタブ)の廻りに断熱材を貼った高断熱浴槽が最近のユニットバスの主流になってきております。まだオプション扱いもありで標準仕様ではありませんので、建て主さんからあった方が方がよいかどうか聞かれます。
オーブルデザインの結論は・・・
「緑の家」に限って言えば、続いて入る習慣があればあえて高断熱浴槽採用の必要無し。しかし数時間の間隔で入浴する事が普通であれば必要。
と答えております。その根拠になりそうな論文がありますので紹介します。
前先生グループの論文。但し原版内容は2008年頃なので既に6年前の論文に追加加筆修正とある。
論文(査読論文)の題名は
「住宅のおける高断熱浴槽の湯温低下抑制効果に関する研究」
となっており、あえてエネルギー削減とかに言及はしておりません。
発表者はこの分野の第一人者の前真之先生グループです。
まず高断熱浴槽はなにか?
上の図のとおり浴槽又は浴槽と洗い場が断熱材で製品として覆われているタイプを高断熱浴槽といいます。下が従来の普通の浴槽です。
高断熱浴槽でも蓋を開ければ効果無!
上の図をみると断熱材があった方がよいのではと言えますが、まずせっかちな私が結論になりそうな図を示します。論文の中ほどにある下のグラフをご覧ください。
断熱浴槽の蓋を開けたときに湯が冷める温度は、普通浴槽の蓋を開けて冷める温度とかわりません。よって、蓋が開いているときには断熱材の有無は浴槽内の湯の温度に影響を与えにくいのです※。
まあ・・・蓋を開けてあれば直ぐ温度は下がるという当たり前の事です。
※但し後述する施工ミスがあった場合を除く。
入浴中は蓋を閉めながら使う人は少ないですよね。つまり浴槽の蓋をしない状態は普通に行われており、家族4人がバラバラに30分づつ入浴して2時間経過すると、高断熱浴槽だろうが普通浴槽だろうがほぼ同じようにお湯は冷めます。
・・・ということで冒頭の結論でお勧めしております。
となるとおもしろみも何も無しの結論ですから少しオーブル流に解説します。
オーブル流解説
まず木を見て森を見ずという諺がありますが、この論文だけで断熱浴槽がよいかどうかの判断はこの諺のとおりになってしまう時がありますから注意が必要です。無論、この研究の題名は「住宅のおける高断熱浴槽の湯温低下抑制効果に関する研究」ですからその点から見ればすばらしい論文で間違った解釈はしてほしくないので解説します。
さて設計者又は建て主として何に注意が必要か・・・
実は断熱浴槽とは何かを説明した最上図はこの本(住宅金融支援機構という国の準機関)のP240 に載っている図の拡大なのです。ひいてその全容を見ると、
断熱浴槽を使用した場合は図の様に外気で覆われてもよい・・・つまり外部に浴槽が設置していてもよいということで、これは今まで行われいた浴槽の施工方法です。皆さんは冬に浴槽の湯が入浴中でもどんどん冷める経験をしたことが有ると思います。これは従来の作り方が間違っており、内部と外部の境がはっきりと決まっていなかったので、浴槽が外気にさらされた状態で入浴していたのです。そんな経験をした人は断熱浴槽が絶対よいと思うでしょう・・・。
高断熱仕様ではない床断熱の場合には浴槽から放散される熱は一応暖房用になる。
「緑の家」は基礎断熱だから完全に床下暖房用となる。
しかし・・・「緑の家」のような基礎断熱を採用すると、お風呂の浴槽は断熱空間の中にあり、真冬でも浴槽の外の温度は室温(17度から22度)なので、急激に冷える事はありません。更に、仮に40度のお湯の熱が浴槽をとおして逃げたとしても、その熱は全て暖房用に変るので、熱が外気に向かって逃げたとはいえません。ただ単に暖房用に変ったので、その家で使うエネルギーロスにはなりません。
外気にさらされる場合は熱は単純にロスとなる。
しかし断熱浴槽だからといって外気に接する施工を行うと、断熱材があっても浴槽から逃げる熱は外気に捨てている事になり、無駄になってしまっております。
だから研究の題名は「住宅のおける高断熱浴槽の湯温低下抑制効果に関する研究」なのです。エネルギーが無駄になるかどうかは関係ないのです。
さて、賢い皆さんは気づかれたと思いますが、これは冬の場合であって夏は浴槽から逃げる熱が冷房負荷になります。しかし夏季の冷房負荷は冬期の暖房負荷より小さく、温度降下も冬より緩やかで又浴室から漏れ出る潜熱負荷より問題は少ない顕熱負荷なので私は許せる範囲だと判断しております。だから・・・「あえて」という言葉をいれ、あった方が良いがそこまでコスト(断熱浴槽は4万~5万アップ)回収のメリットがないとおもっております。無論高断熱にした方がコストを除く全てにおいて※勝っているので、このコストアップが許せば無条件に高断熱浴槽にして下さい。
※仮に逃げる熱が暖房用になって暖房負荷が削減されたとしても、エアコンのCOPは4以上ですがエコキュートのトータルCOPは3以下なのでエアコンでの暖房がエコキュートより効率が高くなります。
コメント
道産子様
コメントありがとうございます。
貴重な投稿内容ですからこのブログをご覧なっている方にもわかりやすくしたいので・・・
・浴室の戸を閉め密閉すれば湿度が上がるので気化熱はすくないから蓋はいらなくてよい?それとも高断熱浴槽は絶対必要。
・基礎断熱の家は浴槽から逃げる熱は暖房に使われるのだから高断熱浴槽は不必要。
・寒い地方は冬、湿気を浴室から供給したいので蓋はかえって邪魔。
・実験でも6時間後で30度(蓋開け、恒温湿で)はぬるいと感じると思いますが、ぬるいという温度はどのくらいと考えましょうか?
などなどありますがどのように理解したらよろしいでしょうか?
我が家は基礎外内断熱です。浴槽も断熱仕様です。でも蓋は邪魔でつけませんでした。冬場は入浴後、浴槽のお湯を直ぐに流さずに床下の暖房に再利用しています。
浴室のドアを閉めきって、換気扇も止めていると真冬の外気-10度くらいでも次の日に浴槽に手を入れてもまだぬるいのです。