思考の組み立て方・・・吸放湿物質と夏型壁内結露 その2

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昨日は一日あたりの走行で人生最長の750kmを運転した(但し同乗者あり)。
朝5時50分から夜の10時まで一般高速道路が650kmで首都高が40km、下道が60kmだろうか・・・。
何故こんなに走ったかは後日ご紹介したい。

さて本題の「思考の組み立て方・・・吸放湿物質と夏型壁内結露 その2」であるが、日経ホームビルダー7月号を中心に紹介したい。

その1では夏型壁内結露のおきるその原理を紹介した。
夏型壁内結露は、

  1. 吸放湿の感度が大きい素材が壁内の外部側にある。
  2. その温度が変化が大きいく、また透湿抵抗の高い材料に挟まれてそこに低温側がある

ほど結露し、また一般的に壁内結露防ぐには

  1. 通気層が適切に設置されていること
  2. 雨漏れや材料に雨がかりがないこと
  3. 透湿抵抗の低い素材を壁のどちらか最外部使う
  4. 吸放湿物質の温度変化をおさえる。

とことを案内した。

それを踏まえて紹介したい。

まずこの記事が秀逸なのは全体構成であり、今までの建築学会での夏型壁内結露に対する経緯や知見が書かれていること。通常このような記事は「恐怖心」や「野次馬感情」を刺激するように紹介できるのであるが、記事はまず正確に今までの夏型壁内結露についての見解を伝えている。その後酷い夏型壁内結露の事例の紹介になっている。

最初の事例は・・・

「通気層がない」合板耐力壁での事。

通気層がないとここまで酷く夏型壁内結露になるのか・・・と改めて教えられる。
特別な24時間冷房していない建物でも起こりえることで、特に気密シートが最内部で合板耐力壁が外壁の最外部にあると酷くなると最悪の条件になりやすい。実はこのことは勾配天井を持つ家と同じ条件になる。無論効果的な通気層があれば問題はないが、通気層があっても効果的でなかったり(棟換気等がない家)、通気層が外気につながっていなかったりすれば、直ぐに屋根は内部結露起こすだだろう。屋根は建築物の中で最も高温になりかつ合板が最外部にあるからで、最悪の条件に直ぐになってしまう。そして事例2は上の屋根の事が現実になった事を紹介している。

その後記事は再現するために実際の大きさの壁で実測している。但し・・・実測は付加断熱のない充填断熱(GW)の条件で、また外壁最外部は合板で囲まれた壁となる。しかも実測は4月23日だから夏型結露ではなく一年中起こりうる壁内結露である。そこで実測の監修を行ったその1でもご紹介した土屋先生は

「合板の透湿抵抗の高さが問題。最近の透湿抵抗の低い建材合板であれば危険性が減る」

との解説がある。

全くそのとおりである。但しこれはあくまでも合板が外壁の最外部(通気層と隣あわせ)にある時のデータである。付加断熱や室内側に透湿抵抗が低くなる防湿シートを使った時はまた違った話になるであろう。そこで透湿抵抗が低くなる可変型透湿気密シートの時の実測も行っておりその有効性を確かめている。ただ付加断熱(樹脂製断熱材やGW系断熱材)の壁構成は実測がないのが残念である。

その後記事は、

壁内の急激な温度上昇を抑えるために外皮に遮熱材を設置している事例を紹介。急激な温度上昇は太陽光によってもたらされるので、外皮最外部(通気層より外部側)に遮熱材を設けることで外壁の温度上昇を防ぐ試みを紹介している。遮熱材の反射率は汚れで大きく変わるのでその点の解決が重要であるが、屋根下にも使える(熱劣化の耐久性は不明)ことから夏型壁内結露防止として有効だと思われる。

最後の記事は、防湿シートを使わない高気密高断熱工法の研究を紹介しているが、その中で防湿シート(たぶんポリエチレンフィルムではないだろう)の経年劣化による性能変化が未検証としている。ポリエチレンフィルムはJISで規定されているし、北欧では既に60年経過している防湿気密シートもありデータも揃っているはずなので、このことではないと思われる。多分私が申し上げている近年大手メーカーが開発した科学による可変型の防湿シートだと思う。

ただ・・・冷蔵庫でもわかるとおり温度差30度もある仕切りに調湿性がある素材だけで壁構成が出来るとは思えない。一時期の限定条件では成り立つかもしれないが、長期的また衛生的に成り立つのか。調湿素材ほど常にカビ発生リスクが高いので私には無難と思えない試みと思う。本文中もそのような指摘があるのでさすが荒川さんがライターなだけある。

最後に強調しておきたいのが、

最近流行の小屋裏を熱の冷房のバッファーにして家全体に冷気を送り込む方式には相当な注意が必要。この方式の欠点は夏型壁内結露の発生原因である、冷たい場所の提供にあたる。また例のドレンつまりが発見されにくい事もある。

夏型壁内結露(天井内も含む)の確率が高くなる溜め込み型冷房方式↑

冷気は直ぐに拡散させてしまうことが重要。可能なら冷気は直ぐに廻りと混合させたい。

通常「緑の家」のように吹き抜け上の壁に設置すれば、エアコンから吹き出される冷気は吹き抜けを拡散しながら1階床面に落ちる。また2階ホールや廊下ならその空間と床面で拡散され、壁や天上面が著しく冷たくならない。通常エアコンの冷気温度は20℃以下であり、除湿冷房時では10度台前半の空気温度になる。これを一次的に狭い空間にとどめると容易にその空間温度は20度以下になり、その小屋裏空間に面した外壁、天井面は20度以下になることもある。特に天上面が20度以下になると壁内結露の危険性が高くなる事は明らか。室内側の断熱付加等工夫が必要となる。

だから「緑の家」では設立当初(1998年)から今まで冷気を集めて配るようなシステムは一切行っていない。冷気は建物にとって「毒」になるのである。それがわかっているから2010年のブログで夏のエアコンはこのように設置している。 過去の実績をみると建築的思考の組み立てが確かかよくわかる。そのためオーブルデザインのブログやHPは過去の実績が全て公開されているのである。

さて私の感想はこのような感じであるが、やはりソースを読んで頂き、各人の感想や意見などがあればお寄せしてほしい。日経ホームビルダー7月号は・・・

↓で一冊から販売している↓。

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