温暖地での基礎断熱工法に憂う

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床下エアコンは諸刃の剣!

床下暖房は数年前から全国的に普及が始まりましたが、カビの事がわかるとその将来が不安になります。

こちらは「緑の家」床下に収納されていた什器。天板の皮革にうっすらとカビが見える。

先日伺った「緑の家」のアフターメンテンスで再び見た物は・・・

収納された天然素材に生えるカビです。

竣工後から24時間床下内を床下用エアコンで除湿していたのですが、思うように湿度が下がらない部分でカビが生えました。

皮革の表面にうっすらと生えるカビ。

使用された天然製品には、目に見えなくともカビの栄養になる物質がついている事が普通です。特に天然素材(木、皮革、綿、絹、毛)などは物質が吸放出する特性上カビが生えやすい物です。今回は竣工後から24時間除湿空調に加え、床下除湿を欠かさなかったのですが、上階の除湿も65%程度と低くはなかったので床下内は70%以上を維持する事になりました。こうなると流石に厳しい状況です。

こんなことは「緑の家」が何時も床下内を目視出来るのためわかる事で、普通の家の床下では発見できないでしょう。「そもそも床下内に物を入れないよ」とおっしゃる人もいるでしょうが、床下内は通常工事の木等のくずが必ず飛び散っています。初めのうちは木でも防かび物質を持っているので生える事は少ないのですが、10年くらい経つと時間と共に防かび物質はなくなり一気にカビが生えます。だからこそ・・・今までの床下内、天井の懐などは密閉されておりました。古い家は比較的カビの生えにくい天井裏(2階床下)内でもカビ臭があります。

今まで基礎断熱工法でも1階床と床下は密閉されておりましたが、近年床下エアコンを行う家が増えて密閉はおろか床下の空気を積極的に利用しよう(床下暖房)という家が増えました。つまりこの床下内の空気がカビで汚染されていた場合、その空気が居住部に入ってくることになります。こんなことは経験豊かな設計者なら普通想像出来るのですが、新築しか経験の無い設計者などは10年先のことなどお構いなしの考えが多いようです。ゴミ、埃、カビの生える気候の本州では、目視など確実にメンナンス出来る前提で床下エアコンを使うべしと最初から口酸っぱくいってきました。

大事な事は・・・

基礎断熱工法が始まったのは北海道です。

北海道は梅雨がないことが知られておりますが、真夏時にも北海道の上空には湿り気のある空気がかかる事は大変希です。

大阪市の12日の午後からは異常な数値になっているがこれは原因が不明。ですが21時に真夏ではあり得ない露点温度12度から考えるに器機のエラー等と想像出来る。

上の図は先日紹介したある適当な年の夏の数日間の気温と露点温度です。場所は新潟市の他に大阪市、仙台市ですが、そこに札幌市の露点温度を加えました。札幌市でも近年梅雨があるのではないかと思われるくらいの湿気があると聞きますが、それでも本州に比べてワンランク下の湿気であることがわかります。よって北海道は本州に比べ湿気のある空気に覆われる事が少ないのでカビの生え方が本州以南より相当穏やかであると想像出来ます。

基礎断熱や床下暖房の生まれた北海道(東北北部や山岳部を含む)のことを鵜のみにして床下内にカビが生えない前提で床下内の空気を使う事に対して憂いております。あそこの施工で大丈夫だったのだからここでも大丈夫等、風土環境も把握出来ない設計者としては失格な短絡発想にならないことを願っております。

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コメント

  1. maru より:

    リンクありがとうございました。

  2. オーブルの浅間です。 より:

    >下のリンク先グラフは床下暖房をしていない頃の「緑の家」の時代での竣工後数年後の実測データです
    ってリンク先を貼り忘れました。すみません。
    http://arbre-d.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_d869.html

  3. maru より:

    コンクリートの建物は1−2年乾かないっていうのと同じですね。床下は温度が低めで、エアコンの除湿も難しいんですね。昔でいう「風を入れる」に変わる新たな生活の知恵を体得して、快適に住めるといいなぁ。[E:flair]

  4. オーブルの浅間です。 より:

    四国の施主様
    コメントありがとうございます。
    >日経ホームビルダーを個人的に取り寄せて拝見させていただきました。
    非常に為になる記事でした。
    全くそのとおりで、この本こそ普通の建て主さんに読んで頂きたい雑誌?です。
    殆ど住宅雑誌が広告で成り立っているPR記事の中で、この日経ホームビルダーは意外としっかりした記事になっております。
    よって建て主さんに知られたくない業界事情なども満載です。是非11月号も連載されますのでご購入してもきっと後悔はありません。
    >「どう住まうか」が不足しているように感じます。
    御意!!
    どう住まうか?もっと大きく言えば人生の1/2の時間を過ごす家の中で、どのような暮らしが楽しいのか?供給する側はプロとしてその青写真を示さなければ家の作り方の選択肢を説明しているとは言えないでしょう。
    ここ数十年の文化・習慣を考えると・・・
    現実的な自然素材との同居を考えると夏は空調すること。通風が好きならカビを覚悟すること・・・。
    と言うことです。

  5. オーブルの浅間です。 より:

    maru様
     コメントありがとうございます。
    >床下エヤコンでも70%以上の相対湿度って、かなり特殊な事情なんでしょうか。
    基礎断熱工法で夏前竣工の初年度床下湿度は、
    一般的に75%以下になることはありません。
    仮に床下除湿を行っても基礎の行き渡りにくい場所は75%になります。
    これは床下暖房時と違い床下内静圧を上げるくらいの大風量でエアコンの空気を吹き入れる事ができないからです(つまり床下隅々までいきにくい)。
    よって最初の年だけは湿度計で測りながら、大事な物を入れるか判断が必要です。吸放湿しない人工物(プラ、金属、ガラス)は大丈夫です。
    下のリンク先グラフは床下暖房をしていない頃の「緑の家」の時代での竣工後数年後の実測データです(24時間空調はしている)。この家でもし床下除湿すれば70%→60%くらいに下がります。つまり竣工年度だけ湿度が上がります。

  6. maru より:

    いつも大変興味深く拝見させていただいております。ありがとうございます。ところで、床下エヤコンでも70%以上の相対湿度って、かなり特殊な事情なんでしょうか。気になって昨夜は寝られませんでした。

  7. 四国の施主 より:

    日経ホームビルダーを個人的に取り寄せて拝見させていただきました。
    非常に為になる記事でした。
    2020基準、2030基準を見据え、ビルダー各位はどの工法で進めるのか試行錯誤の過渡期と存じます。
    素人ながら、その中で高断熱高気密又は高気密高断熱を推し進めるに当たって避けて通れない?のが基礎断熱かと存じます。
    そうすると、戦わねばならないのが「カビ」と「湿気」、「白アリ」でしょうか。
    「白アリ」については、ある程度歴史のある対処法が確立されているかと存じますが、問題は「湿度コントロール」ではないかと。
    私の住む蒸暑地では、高断熱高気密の認知度がじわじわと上がってはきているものの、「どう住まうか」が不足しているように感じます。
    これからのビルダー各位は、高性能な住宅を建てるのは大前提として、住まい手にどのような暮らし方を提示するのかが、今後技量の問われるところかと。
    できれば、浅間様のような博識かつ経験の豊富な方に理論的に説明していただけることが当然の世の中になってもらいたいと願います。