国総研の資料1  屋根の耐久性

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

いつもの国の研究結果を紹介する。昨年発表が行われた資料で先回案内したものとあまり変わりないが、内容は更にシェイプアップされている。

まずその話題の前に・・・もう一度透湿防水シートであるタイベック類の注意について。

随分前にもご紹介したがタイベックをはじめとする透湿防水シートはケミカルの防腐防蟻剤が弱点である。それは下の透湿防水シート協会のHPにお知らせとして2011年に告知されている。

何度も申し上げるが、タイベックの上に接する通気層をつくる木の胴縁材は、長期優良住宅の場合は防腐防蟻剤の塗布か塗り済みのものが推奨される。仮に施工中に雨にうたれなくとも、雨水が通気層内に進入しないときは健全であるが、長い期間の間に、通気層内に雨水または結露が発生するとその成分が溶け出しタイベックなどの素材を壊す。折角の2次防水が、役目を果たすと同時に性能劣化が起こるとのこと。やはり高分子素材とケミカルの相性は良くなく、基礎を1m以上にして化学的にではなく物理的に長期優良住宅の基準を満足することが良いと私は思う。

さて、今日の本題だが

「耐久性」である。

これについてこちらの講演時の動画が年代を追って変化する住宅の仕様を整理してわかりやすくつたえている。この動画を簡単にまとめると・・・

戦前戦後直ぐの伝統真壁の家は耐久性の向上要因は全てプラスであった。
戦後から建てられた昭和の家では、耐久性が悪くなる要因が半分くらいになった。
平成になってからの家では耐久性が劣る要因だらけになった。

これを見て「では、昔に戻るのがよいのだろう・・・」と思わないでほしい。なぜ耐久性が悪くなる要因が増えたのか?
それは人が快適性を求めたからである。

戦後新建材が普及した。その理由の一つが従来より安価でカビの防止になったからである。無垢の木材は夏期にとてもカビが生えやすい(吸放湿する材料はカビやすい)。しかしカビが生えるだけでは木材は腐朽しないが人には悪影響がある。このカビを手軽に防ぐ事が出来たのが新建材である。畳はワラ床にかわって新建材が芯となり、また無垢の木には吸放湿を止めるトーメイな塗装(ワニス等)が施されたことで飛躍的に防かび性があがった。

壁は土壁からプラスターボードにビニールクロスとなり、土壁の吸湿によるカビ害がすくなくなった。このように人が恐れたカビは、新建材の普及によって少なくなったのである。その一方壁内は超高湿化しカビを通り越し腐朽菌に木が犯されるようになった。壁内が超高湿化する原因は・・・開放型の暖房器具が急速に普及するで起こった結露であり、その暖房文化を優先するあまり壁内の密閉化が進み、梅雨時でも豪雨の雨水が壁内に侵入した際にも早期乾燥が出来なくなったためである。

快適性を優先したため耐久性が悪くなる要因を持ちながら、耐久性の悪くなる要因を科学的に排除しようとしているのが現在の高断熱高気密住宅である。

つまりこの令和の住宅は快適性のため「耐久性が悪くなる要因が多数ある」が、それをできる限り手なずけ共生していくことは間違いない。
また合板をはじめとする新建材は、飛躍的に耐震性を上げる事ができ安全性にも貢献した。新建材を正しく使用すれば安価に安全性の高い住宅を手に入れる事が可能である。一方過去の建て方・生活習慣の違いを理解しないと、昭和の家仕様でも耐久性の低い建物になってしまう。

つい最近野地板を構造用合板からバラ板にする事で耐久性があがるのでは・・・との質問を受けたが、雪国で野地板が腐る原因は雨漏りを除き

1.金属葺き・防水シートの使用

2.小屋裏換気不足

3.1類以下の合板の使用

が主な原因である。

雪国では雪下ろしの時に人が屋根に上って破損することがない金属葺きは理想的な屋根材である。ところがこの金属葺きは雨漏れがほぼ無い=屋根材同士の隙間がないので、屋根面から乾燥は期待できない。つまり結露や雨漏れが少しでもあるといつまでも下地が乾かない。ところが近年の瓦屋根・化粧スレートも屋根下地にアスファルトルーフィング等の防水シートを使うので、暴風雨で雨漏れ(防水シート下に水が入る事)になれば金属葺きと同じく屋根表面から乾く事はない。防水シートのない裏側から乾く事を待つことになる。この時に野地板の裏側である小屋裏空間の換気量が少なければ乾くまでの時間がかかる。このことで野地板の腐朽がはじまる。また野地板が合板だと無垢材より透湿抵抗が高く乾きにくいので小屋裏換気の影響は大きい。

更に金属葺きは豪雨でも瓦屋根より雨漏れの確率は低いが、金属系屋根は春先と梅雨時の結露の方が危険な状態に陥る。小屋裏に換気口が不足した家や、勾配天井で小屋裏を持たない構造になると室内から侵入した水蒸気及び蒸し返しにより野地板裏で結露する。この傾向は金属葺きのほうが瓦屋根より大きくなる。金属が陶器よりの熱伝導率が一桁高いこと、そして金属の薄さが災いとなり、屋根裏面での結露を長時間維持してしまうので腐朽しやすくなる。これを防ぐために所定以上の小屋裏換気が必要とされるが、これは室内から流入する湿気と蒸し返しの湿気を排気することで結露そのものを防ぐ事が主目的となる。

近年は何も言わなくと間違えることはない「特類」の表示

一方屋根下地(勾配面水平耐力)に構造用合板を使うなら必ず特類という分類の最高の耐水性をもつ接着剤の合板が使用されなければならない。これは特類で無いと水に対し弱く、常時結露する場所でつかわれると剥離を容易に起す。最近では何も言わなくとも正しい特類の構造用合板が使われるが、20年ほど前には針葉樹合板でも1類の合板がつかわれている現場が多い(価格は少し安価だったため)。このような合板を使えば直ぐに層剥離し腐朽と同じようにフワフワになってしまう。適正規格の合板をつかうことが重要である。

さて今回の資料は全て下のリンク先でダウンロードも閲覧も可能。但し一般のエンドユーザーさんが見るにはちょっとハードな内容や表現が使われているので、このブログで今後もかいつまんで説明する予定である。

http://www.nilim.go.jp/lab/hcg/kokusouken-siryou.htm

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. マナブ より:

    いつも家の勉強をブログにて拝見させて頂いています。
    現在、洗面、キッチン、トイレの床材について悩んでおります。その他は無垢ヒノキにするつもりです。オーブルデザインさんのオススメ、標準材などはありますでしょうか。
    床下エアコン採用予定で、スリッパを使用しない家にしたいと考えています。
    洗面は炭化コルクを候補に入れています。

    よろしくお願い致します。

    • Asama より:

      マナブ様
       コメントありがとうございます。

      >洗面、キッチン、トイレの床材について悩んでおります。

      生活習慣に見合った材料は自分でしかわからないときもありますのでマナブ様のお好きな素材でよいと思います。「緑の家」はそのような基準でお勧めしております。