対象は延べ床面積80平方メートル以上の建物で、石綿が含まれていないかどうかを調べ、結果を都道府県などに報告しチェックを受ける。政令ではこのほか、石綿をセメントで固めたスレートなども21年4月から規制対象の建材に加えるとした。
共同通信
との報道が先月流れた。アスベストは発がん性があり、建物の解体時に飛散し、吸い込むことで健康被害が予想される。住宅には20年くらい前まではセメントでアスベストを固めたスレートも多く使われていた。このためリノベーションや解体時の取り扱いが厳重になり益々空き家が増えることになるかもしれない。
10年ほど前からリノベーションによる空き家の再利用が注目されているが、今回の法改正により、新築のほうがリスクがなく中古市場が冷える可能性がある。特に問題となるのが、当ブログでも指摘しているとおり、築30~50年前の建物で外壁に吹き付け塗装(リシン系)をしている建物は、今までグレーゾーンで解体して案件では確実に費用がかさむ方法で取り壊すことになる。
また今回アスベスト入りスレート屋根は、雪の降らない太平洋側で大変多く使われていたので問題は大きい。また外装用のサイディングも同様であり概ね1995年頃まで大手外壁メーカーで販売されていた。拙宅の外壁もこれに該当するのではないかと思われる。
ただし、屋根材も外壁のサイディングも取り外し時に飛散する可能性が低いので作業レベルとしては一番簡易な方法となるのでそう大きなコストアップになることはない。問題は一体型の塗料や吹きつけの材料である。
さて屋根だけを見るとここ最近の変化が見て取れる。
従来関東ではとても人気が高く多く使われてきたスレート系屋根(コロニアルとかカラーベストなどの薄いセメント系屋根)が、金属系のガルバニュームに変わりつつある。上図の住宅金融支援機構の資料をみても平成29年度(今から3年前)でも金属系屋根はスレート系屋根をとうとう上回った事がわかる。直近ではこの差は広がっていると思われる。
スレート系を抑えて金属系屋根の人気が高いのは次の3つと推察出来る。
1.金属系屋根は太陽光発電パネル設置時に屋根に穴をあける事がない。
2.スレート系屋根の寿命が思ったより短い(ノンアスベスト時)。
3.勾配のぬるい屋根が多くなった。
1はFITとZEHが推進されてから太陽光発電採用が増えた。この時に以前から当ブログで指摘していた。屋根に穴をあけて設置する太陽光パネルがほとんどであり、雨漏れが多発した。元々屋根に穴をあける事は正気の沙汰ではないとんでもないことである。「緑の家」では穴開け設置を過去薦めた事がない(ご依頼時に穴開け設置したことはある)。このことがようやく認知されてきている。
2はネット検索してもらえばよくわかるのだが、アスベストが材料に混入されていた頃に比べ、ノンアスベストのスレート屋根は、割れが比較的早く入るとされている。アスベスト入り材料の粘りの優秀さは誰もが認める所である。一方金属系屋根で亜鉛鉄板だったころでは、金属系は20年で錆びることから安い屋根と敬遠されてきた。しかしガルバニューム鋼板の実績が30年を超えている現在は、錆難い屋根でノーメンテ屋根(再塗装が必要無い)として新たな評価で認知されている。
3は上の図を見て頂ければわかるが、太陽光発電パネルが最も多い量を載せられる片流れ屋根でガルバニューム系の屋根が多く使われる。この時ガルバニューム系の屋根はぬるい勾配が可能なので、雪が積もったときの太陽光発電パネルの滑りやすさを緩和してくれるなどメリットが多く、錆の解消でデメリットはなくなった。一方他の素材屋根では緩い勾配は不可、穴をあける等があり敬遠される。施工が増えると価格も下がることもあり、欠点がほぼなくなったガルバニューム屋根が多く使われることになった。
上の調査結果の図でも平成19年から片流れ屋根が急激に多くなっている。特に5年前から顕著である。但し片流れ屋根は「ある欠点」で今後急激に少なくなると私は推測する。
ガルバニューム系の屋根が増えているとの結果であるが実際の現場ではどうかと思って船橋坪井町の家の屋根上から見ると・・・
白い矢印がスレート系屋根であり、ピンクが太陽光発電自体が屋根になっている最近のもの。水色が瓦系の屋根であり黄色がガルバニューム屋根である。新潟県では当たり前のガルバニューム屋根。今まで関東でほとんど見ることがなかったガルバニューム鋼板系金属屋根の家が3軒しかなく、千葉県を首都圏としているはずなのでデーターどおり。但し金融支援機構を利用する人を対象とした調査なのでその特異性が多少あるのかもしれない。