科学的なことや物理的な事でなくて申し訳ないが、建物の寿命はカビと人の想いが決定的な要因だと何度も申し上げているが、これは人が物でなく人だから。
先回もご紹介したこの東本願寺の築年数は竣工が1895年だから126年となる。鎌倉時代以降何度も建て替えられているのでまだそんな年数だが、このような信仰心によってつくられた建物以外の公共の建物でこの築年数経過しているものは国内においては限りなく少ない。現在リノベ中のotomo vie centも築130年くらい。過去の昭和の有名な建築家がつくった建物でも、耐震性が難があることで取り壊しになっていることを以前紹介した。東本願寺も耐震調査がおこなわれ、冒頭写真の御影堂門は耐震補強を行っている。
その補強方法はこの御影堂門上階にあがる階段を斜材にみたてその接合部を補強することで耐震性を確保したとの説明がある。確かにみると、浮き上がり防止の鉄筋棒が台座から伸びていることが確認できる。
御影堂も平成の大改修で一部スチール補強がされていると境内の中にある展示館で説明文があった記憶がある。このように信仰心で支えられた人の想いが強い建築物は、大きなコストをかけても存続させ次世代へつなげようと人は積極的に動く。従ってここへ参拝すると持続させようとするその人の想いがあふれ出て、それを自然と感じ学ぶことができるからこのような建物がありまた存続できるのだと思う。
瓦の耐久性やコンクリートの耐久性が100年だからこの建物の寿命が100年とはならない。その建物がカビ臭で蔓延することになったときに、その建物管理者に想いがなければ取り壊され新たに建て替えられてしまう。だから我々建築士は、その建物に想いが残るような何かを提供することが最も必要であると感じるが、それはとても難しい。その中で土台としてまず出来る事が「暖かさ」。人は寒いことが生命の危機に瀕していると本能で察知するので、家の中が寒いとなると何故か気持ちが硬直する。それが子育ての時に子供に感じ伝わると、いやな記憶となりその家に愛着がなくなるばかりか嫌い側に傾く。
「緑の家」には誇りたい想い出がある。築20年前に設計したある「緑の家」で、数年前玄関前の庭を壊しカーポートを増設する依頼があった。なぜ増設するのか伺ったところ、
来年は自分は定年退退職するので新潟市から故郷の群馬県に家を引き払って引っ越そうと思っていたが、息子がこの場所(家)が好きだから自分はこの家に当面住むと言ったので、新たに駐車スペースが必要になったため。
この話を伺ったときに、この新しくなる家の主はこの家のこと嫌いではないのだな~と感じた。これが家が引き継がれる最も大きな因子であると私は思い、とてもうれしくなったし、家の設計で最も大事な事をクリアーしたと勝手に思った。一方で現在のオーナーさんの故郷にはやはり勝てないのかと力のなさも感じた。もちろん家の魅力なんてここに定住する理由のごく一部である。しかしもし家が嫌いなら建て替えや他の住まいを直ぐに考えるはずであるが、当面はこのまま住むとのこと。つまりその家が嫌いではないとのことだけで十分である。
少し前、ある建築の大学の先生に「家の設計で最もだいじなことは何?」と聞かれて真面目に「愛」ですと答えた。これはまさにこのことでその家で育った人がその家が好きであれば器としての設計は成功だと思う。
当然20年前でも「緑の家」は高気密高断熱で、家中暖房を行っていたので今の「緑の家」の快適さやランニングコストにはおよばないものの、寒い家ではなかった。素材も今と変わりないヒノキの床無塗装なので、傷は多いがそれが良さと愛着にもなる。これらはこれからも建築士としてよりよい社会なるような器作りに努めたいと思う出来事であった。
コメント
ブログとはまったく関係ないですが緑の家では夏は24時間冷房するとのことですが、絶対湿度が何g/㎥から除湿を始めますか
ホームズくん様
>絶対湿度が何g/㎥から除湿を始めますか
「緑の家」では人の快適性のために24時間冷房運転しているのではなく、自然素材と床下などのカビ防止がメインで24時間冷房(除湿)を行います。よって絶対湿度はカビ防止にはあまり関係ないのでRH(相対湿度)で判断します。常時床下のRH(相対湿度)が65%を超えないように管理を推奨しております。居住部では人それぞれのRH(相対湿度)やAH(絶対湿度)でよいとお伝えしております。ただ多くのオーナーさんが27度未満でRH(相対湿度)50%前半がお好みのようです。