デザインか?安全性能か? その1 屋根の大きさ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「緑の家」って外観デザインが普通だね?何故?

・・・と連れ合いに言われた・・・。

結構ショックではあるが普通=無難が「緑の家」のポリシーである。

連れ合いがボソッと言う・・・。

「緑の家」の屋根って小さい

そう、あえて小さくしている感がある。

何故か?

関東で見る民家は、軒の出(屋根の出)が大きく張り出して、且つ先端が薄く繊細に造られる屋根が多い。これを数寄屋風とか和風建築という時もある。しかしこれを真似ることは新潟県では難しい。

例えば「緑の家」は新潟県をはじめとする北陸地方が多い。北陸と言えば雪が降る地域でどんなに少なくとも最低1mの積雪で建てなさい・・・と法律で規定されている。しかも太平洋側と違い雪の単位荷重が1.5倍以上と定められている。つまり仮に関東で設計するときは積雪が0.3mで雪の単位荷重2.0kg/(m2・cm)→60kg/m2あるが新潟市では1.0mで雪の単位荷重3.0kg/(m2・cm)→300kg/m2となる。しかもこのあとが決定的であるが、関東ではこの60kgを地震時には計算しなくともよいのである。つまり地震時の雪荷重0である。しかし新潟市では300kgの0.35→105kg/m2を地震時の屋根への積載量として計算する。

屋根が重いと地震に不利!ということが阪神淡路大震災以降、一般にも認知された。その屋根が重い原因は瓦であったが、瓦の重さは50kg/m2と雪1mの105kg/m2に対し半分程度の荷重となる。もし瓦屋根に雪荷重があると、3段積まれた重量瓦屋根となる。

そこでようやく何故屋根を小さくしているのか?

となるのだが、そんな重い屋根が小さくなれば当然家の荷重は小さくなり地震に強くなる事は自明。

屋根を小さくするにはまずは総2階建てが有利になる。次ぎに外壁から屋根が飛び出る量(これを軒の出という)を小さくする事で床面積あたり屋根が最低の大きさになる。すると地震力が小さくなり耐震等級が上がる。

・・・と言うことで具体的に数値で示す。

仮に下のような総2階建ての住宅で関東に建つ家。屋根は大きく軒の出は1mにもなる。

耐震等級は最高ランクの3で算定すると

NG項目は0で耐震等級3が認定される。

これを新潟市にそのままコンバートすると(雪のみの比較のため地震地域係数Zは両方とも1.0)、すると・・・

耐力壁が足りないとNGが盛大にでる。検定比で1.3と基準より相当足りない(1未満でOK)。

そこで軒の出を1mの半分の0.5mにすると・・・

うーーん、まだ耐力壁が足りない。

であれば・・・軒の出0として(入力は0.2mとしないと外壁より凹むので)計算すると

ようやく耐力壁が足りることになる。この時の外観は・・・

こんな感じの最近の建物になる。これはこれで好きな人がいると思うが、外壁に木を使う時にはこのような軒の出0mは耐久性に難があるので行わない。

なぜこんなに違うのか?

軒の出の差は屋根の面積に大きく影響する。

上の建物で軒の出1mから0m(実際は0.2m)にしたときの屋根面積の差は1.5倍にもなる。この時の屋根の積載量の差は・・・3133kg

屋根を0.8m伸ばすだけで3トン(普通車2台分)が屋根の上にのる計算となる。

これがわかっている設計者は新潟市に建つ家を設計するときにはやたら大きな屋根としない。大きな屋根にした場合は、耐震性を確保するために壁の多いプランとなり、居間などの空間が小さくなったり、窓が小さくなったりする。
もし新潟市では無く長岡市でしかも耐雪2.5mなら更に小さい軒の出として窓を小さくする事は避ける。すると「緑の家」は・・・

このような蓮潟の家のようになる。耐震等級3で耐雪2.5mで窓も大きい。これは総2階で軒の出が0.6mとして設計した。家の中にいる時間は人生の1/2と長い。その時に内部の空間の豊かさを選ぶか、外観の良さだけを考えるかと比べると前者を選ぶ人が多いので、「緑の家」は屋根をやたらと大きくしない。

ただし・・・

外見重視で軒の出は大きくしてほしい。窓の大きさはそこそこでよい。との希望があれば・・・

ほぼ平屋に近く軒の出も1mと大きい「緑の家」。建て主さんの堂々とした屋根が最重要とのご要望にお応えした外観優先の「緑の家」。

雪深い新潟県であっても軒の出1mの耐雪1.2mの「緑の家」となる。

さて・・・

では世の中に積雪地域にも関わらず軒の出が大きくてしかも窓も大きい家があるのは何故?

との意見があると思うが、

実は耐震等級の認定を受けていない家は、多分、多分、多分であるが、

構造計算をしていないのである。

建築基準法は特例があり、一般的な木造住宅は構造計算で無く仕様規定で家を建てる事ができる。この規定で建築する会社がほとんど。この仕様規定は家の床面積に対して耐力壁を決めている。しかし、しかし、

この量は関東でも新潟でも同じ量である。軒の出が大きい関東のデザインをそのまま新潟市でも建てられるのである。つまり耐雪量、軒の出を考えておらず、このままの仕様基準で造ると必ずと言ってよいほど構造計算するとNGとなる。しかし構造計算より桁違いに簡単なチェックですむので多くの、いや、ほとんどの建設会社さんは仕様規定で家の耐力壁を設計する。

私たち知っている業界人から見ると・・・大変怖い考え方である。

建物スケールが大きい事と桁飾りがあるのでわかりにくいが、こちらの「緑の家」では軒の出は1.2mにもなる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする