高気密高断熱住宅(拙宅)の31年目の樹脂サッシの取り替え その6 まとめ

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納まり上、今回クロス通気は難しかったので30×40材で通気層30mmを確保し、且つ透湿防風防水シートは断熱材がGWのため防風層にもなるのでブチルテープによる全面接着は必須となる。

当然・・・今回の一例で全て建物がそうであるかのような事を申し上げるつもりはないが、過去様々な家のアフターメンテナンスでも多くを経験している。それらを事例を踏まえて、今回の31年経過した高断熱高気密住宅壁内状況のまとめとしてお伝えする。
その1 その2 その3 その4 その5

山形プレートが完全に溶けてなくっている柱脚(白い矢印)。今回追加して取付けた10KN用引き抜き金物(ピンク矢印)。柱脚、土台がまだ健在であるからこそ途中部分の微細な雨漏りによる腐朽が問題であったと言える。

1.とにかく雨漏れ※防止

わずかでも雨漏れが起き部分的腐朽でもその箇所が柱接合部や梁接合部であると、耐震性に大きな影響を及ぼす。接合箇所でないときは大きな問題ならないが、やはりわずかでも雨漏れは起こさないような壁構成がよいといえる。
※雨漏れとは透湿防風防水シートより室内側に雨水が入り込む状態のこと。

2.微細な雨進入※2は二次防水で防ぐ

外壁において暴風時には一次防水層は突破され微細な雨侵入が起こる。よって一次防水だけで雨漏りを防ぐという考え方は難しい。微細な雨侵入がおきたときに雨漏れが起きないように二次防水を確実に発揮させる必要がある。そのため透湿防風防水シートの耐久性とそれらを確実に発揮させる防水テープの耐久性と正しい施工は必須である。今回の件ではタイベック及びブチル系の防水テープ(片面でアルミ蒸着タイプ)の耐久性は合格点になる。現在標準施工として採用されるブチル系の両面テープや片面テープならアクリルテープの実績はこれから明らかになるので、もし実績を求めるなら、タイベック、ブチル系テープの片面アルミ蒸着が素材としてはよいと言える。
※2 微細な雨侵入とは、一次防水を超えて通気層に侵入した雨水のこと。この状態では一般的に雨漏れとはいわないので使い分けて使用する。

3.通気層は確実に通気出来る構造とする

窯業系や金属系の湿気を通しにくい外壁の場合、梅雨のある日本では、微細な雨侵入に対し通気層が耐久性アップに大変効果的な施工方法であるといえる。そこで一般部分の通気施工は問題ないが、窓周囲及び出隅柱部分などは、杓子定規的な施工は難しく通気が滞りがちになる。又その一方でこの箇所の特性上からの微細な雨侵入も多くそれが腐朽が高い箇所になる。つまり窓周囲と出隅柱がどんな状況でも簡単に通気がとれやすい施工方法を採用することが重要である。

4.31年前の基本構成で本州5.6地区で夏型結露なし

壁構成とその部材は上の平成11年に発行された国のマニュアル、及び31年前の北方研発刊の書と全く同じでオリジナル性はない基本に忠実な高断熱高気密住宅

拙宅は微細な雨侵入があった外壁状態であった。それでも夏型結露による問題はない。夏型結露防止のためあえて調湿シートを使う必要はないとこの過酷な現場でもそう考える。特に国の高断熱高気密のマニュアル通りに設計施工しているホントにオーソドックスな材料と構成である。

改めて31年前(1991年)ころに確立していた高断熱高気密の基本構成は、内側から

・仕上げ材(シナベニアであるがクロスでもPB+AEPでも同じ)
・気密シート(防湿シート)ポリエチレンフィルム0.2mm
・GW(裸の高性能グラスウール16kg品)
・透湿防風防水シート (タイベック)
・通気層18mm(縦胴縁)
・外装材(クボタ製オートクレーブ品)

であるが、この構成で正しく施工し正しく空調すれば5、6地域の夏型結露問題はない。もし冷房用のチャンバー室(小屋裏)などつくった場合は適切に室内側に付加断熱で厚くして(防湿シートの手前)運用しないと結露は起こる可能性が高くなることは注意。あくまでも夏期の室内壁面温度は24度程度位にする。繰り返しだがあえて調湿シートを使う必要はないとこの過酷な現場でもそう考える。

5.タイベック及び気密シートの耐久性は合格

2で申し上げたとおり透湿防風防水シートはタイベックハウスラップであったが、当初想定していたことはなく、その機能の最低限は確保出来ていた。また気密シート(当時の宇部貿易製ポリエチレンフィルム0.2mm)も全くと言って良いほど健全でその信用性も裏付けもできた。特に風雨にさらされにくい気密シートの耐久性は50年以上可能だと思えるほど劣化はないように見えた。当然この地域は18年ほど前に中越地震で震度5、中越沖地震で震度5強を受けているが、その揺れによる破れやタッカー部分の引き裂きなど目視では見られなかった。

6.ブチルテープは信用性大

ブチルテープを使うと必ず手がこのようになり、これが31年続くくらい密着力がよい。アクリル型の防水テープとの違い。

ブチルテープの信用性は大きい。33年前の1989年頃に使い始めたときに、「こんなテープが30年以上粘着力があるのか」と半信半疑で貼っていた当時の記憶から見ると、良い意味で裏切られた。31年後の現在でもその密着は続いており、初期に不良だったと想像できる部分以外は、良い状態であった。確かにブチル系の化学素材の実績は古くからあるので今後もメインで使用したいと考えている。

7.通気層内や壁内は綺麗ではない

30年経た外壁内を見た人ならわかるが、まず通気層は蜘蛛の巣を始め黒いカビが所々に生えて汚い。ここから新鮮空気をとる研究があったようだが現実を見てほしい。またGWではあるがこちらも綺麗とは言いがたい。時折虫が干からびて死んでいるし、空中のPM物質かのことことだが、黒い汚れが見て取れた。また夏型結露の恐れがないことがわかったため、この壁内空気に対し湿気も含め完全に室内空と遮断してもよい、いや・・・遮断したほうが室内空気の健全型が保てると感じる。

8.基本に忠実な家が良い家

良い家の定義は決められないが、少なくとも多くの人が望むのは、快適性と耐震などの安全性は最低限で、それらを除くとメンテナンスが最小で耐久性の高い家となるはず。その点通気層をはじめ今回の基本壁構成では特に大きな問題はない。一方微細な雨侵入でも通気が機能し難い箇所では早期腐朽の可能が高くなるので、通気層の工夫やシーリング切れに注意する。特に木の外壁の場合、窓周辺や出隅柱及びフード周辺など隙間からの微細な雨侵入が発生しやすいので、窓なら庇、フード、出隅柱なら大きな屋根下等の配慮が必要となる。当然であるが屋根の軒の出が無い建物では、暴風時だけでなく通常の雨でも微細な雨侵入を生じやすく、その際通気が機能しがたい構成であると腐朽は早期に訪れると考えられる。

今回の拙宅が日本海の真ん前に建つ立地条件となり、そのため加速促進試験が行われたかのうような事もある。例えば暴風時の雨漏れは野中の一軒家のごとく厳しい風環境であるし、海水を含む飛沫雨は金属類(柱元補強金物)を早期に腐食させていた。特に注意したいのは透湿防風防水シート直下にある金属類は、雨漏りがなくとも微細な雨侵入により水分に接する可能性が高い事がわかる。ステンレスのような酸化し難い金物を除くと、金属類は出来限り透湿防風防水シートから離し室内側に近い位置が望ましい。その点「緑の家」のようなHSS金物等は内部に埋め込まれるのでよいだろう。問題は構造用合板に打ち込む釘である。釘のほとんどは鋼製でありメッキ層もない。これらの釘が透湿防風防水シートに接していて問題ないか今後の調査を待ちたい。筋かいの接合金物の釘は亜鉛メッキされているので今回のような海水でもなければ問題ないだろう。

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