建築士が考える耐震性 その2

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

雪国では積雪時に地震が来ることをどのように考えるかは、耐震性を語る上で重要なファクターである。

設計積雪量2mで設計した片貝の家(2012年撮影)

11月1日のブログで同じ耐震等級3で公的評価を取得しても、設計者によって耐震性は変わると「その1」では申し上げた。読者さんの中には、耐震等級3なら大丈夫と思っているかもしれないが、設定条件をかえることでその評価の中身は違うことが理解できたと思う。それはその1で紹介した地震の地域係数だったり、以前申し上げた設計積雪量、そしてまだご紹介していない積雪時の地震が来たときの荷重の係数がある。そこでこの「その2」ではこの地震時の雪の荷重係数について触れたい。

ある「緑の家」の構造計算書の一部。

以前から住宅の設計者の思考は、第一が安全性と言っている。先回のその1でも一般の建て主さんは全く知らない耐震性能は同じ耐震等級3を取得しても違うことを申し上げた。実は今回も同様のことで、設計者の思考で決まる耐震性の違いをご紹介したい。それは上のピンク部分である積雪時の荷重である。

耐雪1mで設計された住宅は当然1mの雪が屋根に積もっていても壊れないように、雪の荷重を原則3000N/m×1m=3000N/m2として屋根を支える梁が壊れないことを構造計算で確かめる。3000N/ m2とは≒300kg/m2である。最も軽い軽自動車であるスズキのアルトを屋根2m×1mに乗っけても壊れない強さがあり、30坪の総2階建てであればアルトが30台載せられる事を意味する。ところが地震時にはこの35%の荷重に減じて1050N/m2として計算する。つまり地震時の屋根には本来はアルト30台が11台くらいの1/3になっているように計算する。

通常建物影響を与える地震力は建物の重さに比例するので瓦のような重い屋根は軽い屋根より、大きな地震力が家に作用する事を多くの方が知っていると思う。そこから考えると、何故雪の荷重を35%に減じ軽くして構造計算するのかの理由を知りたいと思うだろう。しかしこの理由はこの建築業界内でも諸説有り、公的に表明されていないと記憶している。

よくある理由が、積雪時の長期荷重の軽減率70%の半分で35%とか、雪は柔らかいので地面から入力された水平力が働いたときに、建物本体から振り子のように遅れたりすることで、その荷重分の35%しか影響を与えないし、その影響で屋根外周雪は落雪する、はたまた屋根に雪がある期間はごくわずかなので確率的な思考で減じた・・・等。

確かに雪柱に対しある加速度以上を与えると折れたり崩れたりすることはあるが、一度融解して凍ってしまった雪は、ほとんど一体で動く時もある。そこから考えるとやはり35%まで軽減するには至らないように感じる。

さてここで「緑の家」ではどのように構造計算しているかというと、やはり地震時の検討(短期荷重)は35%としている。例えば積雪1mで指定されている新潟市の中心部や自宅のある寺泊であると、確かに積雪1m降る年は5 年に一度はある。しかし2から3日もすれば、雪の量は2/3になり一週間もすれば半分以下になってしまっていることをこの半世紀のあいだ体感しているからである。356日×5年の10日間だけ短期荷重を超える期間があるとすると、0.5%の確率である。しかも理由の一つとされている、雪は固体ではなく、建物と周期が全く別になったり、その柔らかさ(空気の隙間)で水平荷重を吸収したりする。それらを考えると、35%に軽減しても問題ないと判断できるからである。しかしその確率で大事な事は・・・設計積雪量は市で定めた積雪を必ず標準としなければ意味がない。例えば三条市なら2m、旧新津市で1.3m、長岡市街地なら2.5mとなる。この数値は結構厳しい見立ての積雪量である。例えば三条市でも2m降ることはここ30年ないが、それでも60年には一度2mを超える積雪がある(昭和39年の豪雪)。60年間に一度でも2m雪が降ったとき、この60年に一度の確率に更に地震時に雪が2mに対し35%ある日数(0.7mの積雪)は概ね21日間とすると確率は0.1%と下がる。なので、三条市などは新潟市より有利な確率となる。この時間的な確率で震度6強にその地域がであう地域的確率を考えるとほぼ更に21桁下がることになる。よって35%の軽減で問題のではないかと考えている。とにかく重要な事は、あくまでもその地域の指定された設計積雪量以上の耐雪設定をすることである。

また耐震性だけでなく行政で指定された積雪量にさえしておけば、その家が建っているあいだは雪下ろしをしない可能性がたかい。雪国にとってこれはとても大事である。その大きな理由は・・・屋根の雪下ろしを頼める人がもういないのである。雪下ろしをしなければ当然屋根が壊れる。50年以上前は、雪下ろしを頼める人が多くいたが時代も変わり今はいない。となると・・・やはり行政指定の設計積雪量は最低限の条件だと考える。

このように建築士が考える耐震性は設計思想によってかわる。だからこそ安全第一との想いが大事だと思うのである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする