新潟市白山浦の家 屋根通気

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昨日上棟した白山浦の家。途中まで曇り空だったが午後から小雨がぱらついた。

白山裏の家は笹越橋の家から続いて勾配天井のある平屋。そのため2重になる屋根合板の間に30mmの通気層を確保して上棟するので、手間が多少かかる。

この屋根通気層は「緑の家」1999年(平成10年)頃の設立時から行っている。巷ではこの必要性が叫ばれ始めたのが10年くらい前の2010年(平成21年)くらいだからここも自慢できる「緑の家」先見性である。

2枚目の合板を貼ると屋根の木下地は完成する。棟には換気口が取り付き通気層内の空気を排出する。勾配天井の場合この通気層がないと、積雪地である新潟県の屋根の耐久性は結露によって著しく低下する。

ところで・・・

外壁の通気工法はもう有名だがこの普段聞き慣れない屋根通気層の法的根拠は・・・実はまだないとも言える。

小屋裏換気の代わりとなる屋根通気層は耐久性の観点から必要な機能であるが、性能表示制度の国が監修している↓マニュアルにおいて小屋裏が無いので屋根断熱する場合は小屋裏換気の基準がないとの解釈となる。

この本の耐久性の基準であるページには・・・

小屋裏が無い屋根断熱時には小屋裏換気は必要無い(ピンクのところ)・・・まあ小屋裏が無いので室内環境になるため換気が出来ないと解釈する。

しかしよく読むと、

この性能表示マニュアルにおいて屋根通気の根拠が出てくるのは温熱環境の基準(断熱性能)があり↓のページになる。

上図の透湿抵抗比では、透湿抵抗が低い瓦など想定してとおもわれる。しかし近年多くなったガルバニューム葺きだと、薄くとも金属の透湿抵抗は計算上無限大なのでNGとなる。この場合、通気層を外気として定常計算するしかない。

そこには屋根断熱で小屋裏空間を作らない場合は、透湿抵抗比によって屋根の内部結露の安全性を確認しなければならない記述がある。これは冬期の内部結露対策であって、夏期結露や雨水の長期浸入対策では無いことがわかる。この基準はそのまま長期優良住宅の基準であるため屋根通気層を持たない、又は透湿抵抗比、その他計算によって内部結露無しを確認ししなければ長期優良住宅として認められない。

つまり新潟県のほとんどを占めるガルバニューム鋼板葺きの屋根断熱時は、ガルバニュームの透湿抵抗が無限大になるので屋根通気層が必須であると言える。さて巷では行っているだろうか?

一方先日も紹介した国総研の耐久性の研究では、雨漏れの釘穴から浸入などの乾燥を速やかに行うためには、小屋裏換気の重要性が確認されており、これは屋根断熱でも同様であるが、下の平成10年の住宅金融公庫(実質国のマニュアル)にはそのことが「望ましい」との表現になっておりこれは20年以上経過した今も同様の表記である。近いうちに追加訂正されるはずだが、通気層の雨水浸入時の乾燥・排出効果がまだ定量的に評価できていないかもしれない。

平成10年発行のこの国のマニュアル本の下のページには・・・

解説には小屋裏換気は必要無いが、屋根通気層を設けるのが「望まれる」となっており、屋根通気層も耐久性アップの必須条件では無いが、ある事が望ましいと32年前から同じ。しかし国総研の研究結果から近々変更されると思われる。

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コメント

  1. 心配ショウ より:

    返信遅くなり申し訳ありません。

    あの後工務店に確認したところ、18mm通気層の棟換気は空いておりますが軒先の入口が空いていないことが分かりました。
    ルーフライナーをガルバ直付けにならないようにするための措置のようです。
    (30mm通気層はしっかり軒先に入口があります)この納まりだと18mm通気層(空気層?)部分は空気が動かず、ガルバ直下の野地板は乾きにくい状態になると思い、結局ゴムアスルーフィングを葺くことにしました。

    透湿ルーフィング(ルーフライナーに限らず)は瓦のためにあるような気がします。
    ガルバの場合の収め方が不明ですが、ルーフィングを二重にするコストを考えるとあまり良い選択ではなかったようです。

    色々とお教え頂きありがとうございました。
    これからもブログ楽しく拝見させて頂きます。
    ありがとうございました。

  2. 心配ショウ より:

    こんばんは。
    いつも楽しく拝見しております。

    現在新築中で垂木施工まで終わっております。
    屋根の構成について、教えて頂きたくコメント失礼いたします。

    現在の工務店では上から(外部から)
    ガルバ縦平葺き(切妻屋根で棟換気あり)
    野地板(杉ザラ板)
    通気層18mm
    デュポンルーフライナー
    野地板(杉ザラ板)
    30mm通気層
    ネオマ等の断熱材
    気密シート
    となっておりますが、ガルバと野地板との間にルーフィングが無いことを懸念しております。

    ルーフライナーがあるので雨漏りは心配無いですが、ガルバ直下の野地板が腐れたりする可能性は無いのでしょうか?
    野地板直下に通気層があるので問題ないのでしょうか。
    透湿ルーフィングの上には通気層をとることがマストかと思いますが、野地板を張ったら更にゴムアスルーフィングなどを張っているのでしょうか?
    上記構成で問題ないのかご教授頂けますと幸いです。

    • Asama より:

      心配ショウ様

      >ルーフライナーがあるので雨漏りは心配無いですが、ガルバ直下の野地板が腐れたりする可能性は無いのでしょうか?

      最初に、ガルバの直下に防水シートが無いのは、瑕疵担保保証などの設計施工基準、住宅支援機構の標準仕様書にはないので一般的な施工とはいえません。
      防水シートの役割は2つ有り、表面材が何らかの原因で問題があった時の漏水に対する2次防水と、施工中ガルバなど表面仕上げができるまでの仮屋根防水となります。2次防水の機能は通気層下のデュポンルーフライナーが行なうので問題無いように見えますが、仰せのとおりルーフライナーとガルバに挟まれた木は、濡れることになり腐朽する心配があります。似たような構成に瓦葺きがあり瓦の下に引っ掛け桟という木が防水シート上にはいる施工があります。ガルバと決定的に違うのは瓦はガルバより圧倒的に水が浸入しやすいのですが、台風などで水が侵入しても乾くのが通気層で乾かすスピードより早いので、腐ることは大変稀です。一方ガルバでは台風などで水が浸入することは大変稀ですが、一度通気層に侵入すると乾くのに時間がかかり腐朽する可能性もあります。その侵入する例として、竣工後15年以降の棟換気部材周囲のシーリング切れがあります。

      >透湿ルーフィングの上には通気層をとることがマストかと思いますが、野地板を張ったら更にゴムアスルーフィングなどを張っているのでしょうか?

      メーカーの施工要領をみると、瓦の下葺材としての図はありますが、ガルバニュームの下葺の文言はありません。しかし瑕疵担保の個別3条の認定を得ていることから、下葺材としての機能は公に担保されておりますので、金属屋根の下葺としても使用して問題無いと思われます(私の仮説では金属屋根直下では温度が高くなりすぎてこのような特殊機能をもったシートは劣化が早いのでNG。だから通気層が必須となる。)。そこで質問への回答として最初の質問の返答にあるように、新潟県内で私なら金属屋根直下のルーフィングは必要と考えます。
      蛇足ですが、杉ざら板なら勾配面剛性が極小なので構造的に注意がひつようです。

      • 心配ショウ より:

        早速のご回答ありがとうございます。
        詳細までご回答頂き感謝しかありません。

        浅間様の仮説のとおりで、屋根職人さんによるとガルバ直下にルーフライナーを葺いて熱で溶けている事例を見たことがあるそうでNGとのことです。
        そのためルーフライナー上にも通気層18mmをとっているのですが、その18mm通気層がガルバ直下の野地板の腐朽を遅らせる(乾かす)ことが出来るかと考えていたのですが、やはり腐朽する可能性がありますか・・・

        そうなるとガルバ屋根の場合でルーフライナーを使用する場合はルーフィングが二重になるのが一般的な納まりということなのでしょうか。。。
        (新潟のエスネルさんなどはそうしているようですが)
        ルーフライナーを採用する目的として排湿はもちろんですが、高耐久(50年)も期待していましたが、その上にゴムアスルーフィング(20年)するのはコスト的にもメンテナンス的にも意味がなくなってしまうような気がしてあまり気が進みません。

        • Asama より:

          >そうなるとガルバ屋根の場合でルーフライナーを使用する場合はルーフィングが二重になるのが一般的な納まりということなのでしょうか。。。

          一般的な納まりは、公的仕様書どおりルーフライナーではなくあくまでもゴムアスのルーフィングを金属屋根直下に設置することでしょう。金属屋根自体の透湿抵抗が実質最大ですからそこに透湿抵抗が高いルーフィングがきても理論上問題無いでしょう。金属屋根を使う限り積雪時のルーフィングの一時の結露はなかなか防げませんが、小屋裏がある家の実績では一時の結露で合板野地でも傷むことは「緑の家」で過去経験がありません。それは当ブログの実例写真でも載せております。

          >ルーフライナーを採用する目的として排湿はもちろんですが、高耐久(50年)も期待していましたが、

          ルーフライナーと同じ機能のタイベックは20年~30年でボロボロになる経験をしておりますので、このような分子レベルの高機能製品の過信は考えものです。
          しかし・・・単純な切妻屋根であれば、欠点は棟換気のシール部分に限られますので、この部分のメンテナンスさえしていれば、金属屋根の寿命以上に野地板を含む木下地は耐えると思いますので今回の納まりで問題無いと思います。