現在旧新津市(現新潟市秋葉区)に建築中の美幸町の家は、旧山北町で製材された杉の集成材を柱や梁に使っている。杉ラーの私にとって現場に伺うと構造材の杉の匂いに満たされる幸せを感じる。
当然床組みの下地である「大引き」という素材も杉の集成材E65F255 である。それが上の写真であるが、木目がとても綺麗。
このまま仕上げ材として使えるような肌のラミナであるが、これが下地として隠れてしまう。
その他できる限りさんぽくで製材された「杉」及び「杉の集成材」を指定しており、あらゆる部材が杉となる。あえて集成材を使う理由は、完全な乾燥材を供給できることで完成後の気密性の維持可能、および強度が無垢材の1.5倍程度で考える事が出来るため、梁材が通常の懐寸法で納まることである。強度面はそれでもいつも使用する欧州赤松のE105F300からみると数割低いがそれは杉なのでやむ得ない。
美幸町の家は平屋となるが、結構大きいので小屋裏はご覧のように巨大で古民家のように、造作すれば人が住めるくらいになる高さとなる。しかし小屋裏も出さないし、ロフトなども設けない無難な屋根下小屋裏空間とする。このため小屋裏の振れ止めもしっかりと配置することができる。
平屋ではこのような小屋組を露出させず平らな天井とする理由は、歳を重ねた際のメンテナンスの「無難」を追求しているからである。
小屋裏の梁が露出することは室内雰囲気が良くなる場合が多く、平屋では高確率で勾配天井で計画する。ただし梁や空間が複雑になると、メンテナンスが煩雑になる。露出した梁上には埃が必ずたまり、年に一回で梁上の掃除をすることは必須であるが、年の途中でも埃が上から舞ってくるときもある。また照明器具のメンテナンス(LEDでも数年で不点灯になる事例が結構ある)がし難い配置になることも多い。若い時分はそのメンテナンスでさえ結構楽しんで出来るのだが、歳を重ねた時に、もっとメンテナンスから自由でありたいという気持ちになるはずである。私自身も最近は吹き抜け上の梁の上を渡ることは、流石に怖くなってきている。メンテナンスで脚立に上らなくても自身で限りなくメンテナンスできる住まいが、無難な事になると思う。
そのため床下収納は何時より床を真っ平らにするのにコスト的に有利な布基礎。布基礎採用の理由はこの床フラット化と高低差がある敷地に対応するためである。
その一方、普段の生活においては2階に上がる階段などがあった方が自身の耐力を維持できる。この美幸町の家でも平屋とはいえ、家内に階段はあるし、1階の床高は地面から1.5mもあるので、庭へおりる度に上がり下りをする。このような日常歩行では使わない筋肉を毎日の習慣で自然に使う事ため、基礎体力を維持できる事になる。更に道路より0.9mくらい高い敷地なので、1階へ上がるには、1.5階にあがる程度になることも実は健康に良いと私は考えている。
美幸町の家ではできる限りの「無難」を取り入れており、外壁もALCの30年塗膜を採用している。その一方で「デシカ」や「電動外部ブラインド」など電気式の快適性道具を装備していることもある意味で無難な家と言える。
最近話題にした窓のチョイスであるが・・・深い軒の出及び真南になる方位となるが、手入れされた庭を晴天の日も常時窓際でも眺めることが可能なように全て窓は日射遮蔽タイプ(η=0.24以下)である。また透過色がナチュナルなように配慮したガラス選定としている。そのため今のところこの窓にはレースカーテンは無しで紙障子が取り付く予定である。