木造伝統工法は地震に強くない??強い?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

赤字は2008.1.27に加筆

上の写真は、日系ホームビルダー2月号の記事の写真。

記事と写真によると、所謂補強金物とスジカイを使わない伝統工法の耐震性を公的団体が研究調査したということ。たんてきに結論から申し上げると、地震に対しては「普通」だった。(特別弱いわけでもない)

※・・・伝統工法とは、補強金物や布基礎など使用しない工法。最近ではほとんど建築されていない。今の木造は在来木造軸組みと呼ばれ区別される。しかし今でもお寺や神社、一部の民家として建築される。一般の木造の仕様規定に当てはまらないため、全て限界耐力計算などの難易度の高い構造計算が必要。ただ単に丸太梁等を使った在来軸組み工法の家とは全く違う工法。

この実験の伝統工法は、通し柱150mm(一般では120mm)、普通の柱120mm(一般では105mm)、筋かい代わりに、土壁(貫工法)の仕様となっている。写真でもわかるとおり伝統工法でも外観などプランのバランスは今の住宅と同じような総2階建てとなっており、偏心率は0.3(偏心とは建物重点と強度の中心のずれのこと)以下となっている。柱は基礎に緊結されておらず、石に穴をあけその中に土台、柱の一部をさしてある。

震度7の地震力を与えて壊れ具合を見ると、1階の柱が折れ傾き、法的には倒壊との判断。実験した団体によると、建築基準法で定められている土壁の壁倍率をおおむね満足しており、ほぼ予想通りとの事。

これより判断できることは、伝統工法だから特別な耐震性ではないということ。逆から見れば、柱が一般より多少太く、土壁という金額のかかる家(3割以上高い)であっても、耐震性は普通の家とかわらない。いかに今の在来工法が倹約(最小部材)してできているかということがわかる。工場でその多くを造るミサワホームなどは、その柱などの構造部材のが在来工法よりもっと小さいのでその最小断面の芸当は「芸術の域」に達している。

この実験棟の伝統工法は、一応構造がわかっている人がプランしているが、地方ではもっとバランスの悪い伝統工法と在来工法を2で割ったような家がある。そんなものの実験も必要かも知れない。どんな工法であれ、自由プランであれば最終的にはその設計者の構造思想で強さが決まるとも言える。

では、伝統工法のメリットとは何だろうか?それは金属やコンクリートに頼らない正真正銘の「エコ住宅」であるということ。建物のそのほとんどが、土と木、石でできている。まだ金属精錬加工技術やコンクリートが存在しなかった時代からある技術なので、当然と言えば当然。したがって解体時にはすぐに土になるすばらしい工法。そしてエコには必ず高コストがついてくる。コピー紙もリサイクルペーパーのほうが新紙より高いのと同じ。手間が掛かるのである。それが一番の問題・・・。

PS・・・伝統工法でも「暖房」するなら「高断熱高気密」は必要。これは12年間も当HPでご説明してきた。寒いところには、今の文化では「人は住めない=手放す」 と言うこと!建てた本人は我慢できるかも知れないが、その家を引き継いだ次の世代が同じように我慢できるとは限らない。だから高齢者が住んでいた「古民家」が売りに出され暖かく改造して建築されている現実がある。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする