2016年08月緑字加筆
さてエアコンについていろいろ申し上げて来ましたが2010年のまとめです。
その前にもう少し除湿運転について・・・
今回の実測はメーカー設定で強力除湿(所謂再熱除湿ですが、リモコンにはその表示がない。これでは再熱除湿なのか普通除湿なのか不明なので問題)を設定してみました。
結果は確かにエアコンからの吹き出し温度室温は殆ど下がらず湿度を気持ち悪いほど一定に制御してます(ベージュ楕円内の水色の線の水平に注目)。明らかに他のモードの吹き出し温度とは全く違います。
但し効率が下がり消費電力もあがっているはずです(機会があれば実測します)。体感は殆ど変わらず特に再熱除湿だから気持ち良いという感じではありません。事務所は50帖くらいのワンルームで、この大きさで10帖用エアコン1台の運転ですから高気密高断熱の家中除湿に相当する使い方です。
さて再熱除湿運転以外の冷房運転では、先回と同様に相変わらず日中の温度が上がりそうな時に高出力になることで、吹き出し温度が急にさがり除湿も強力おこなわれます(紫楕円部分)。結果室温が下がらないけれど湿度が下がるという理想的な空調になっております(低気密事務所でこの結果なので高気密住宅ではもっと快適です)。
さて冬の使い方を含め今までのまとめです。
高気密高断熱住宅でのエアコンの使い方は、
1.暖房は数台で分散運転させる。
上表のとおりCOPのトップクラスの高性能エアコンでも、外気2度という新潟県の冬の気温では、エアコンの(定格)暖房出力の半分くらいで運転させないと、折角の高効率エアコンが生かせません。Q値1.9(Sプラン40坪)の家では5kwの暖房を必要としますので、5/1.45=3.4台 つまり3~4台のエアコンを小さく運転させるとCOPが5.5と良いのです。上の表のエアコンでは1台で5kwの暖房出力がありますが、COPが3.2と相当悪くなります。だから1台集中運転は止めましょう。目標は定格出力のの半分出力です。
2.除湿は「冷房運転」が基本。再熱除湿含む除湿運転は必要最小限度に。
家中で除湿できる高気密高断熱住宅の除湿は、普段人がいない2階で冷房運転がベスト。冷房運転 で寒く感じる場合は再熱除湿運転にすると良いでしょう。私は薦めませんが勿論エアコン無しで梅雨を過ごされてもOKです。この場合は、昔と同様に梅雨明けに「ムシ干し」と「毎日の掃除」を必ず行って下さい。これを怠ると自然素材にカビが生えます。
3.冷房時にもできる限り家中で。
これについてはこのブログをご覧下さい。
超高断熱住宅の夏は除湿に力を入れるべきとの論調もありますが、だからと言って湿度だけを下げる「再熱除湿」は省エネから見れば本末転倒です。やはり冷房運転が本来の省エネと快適性の両方を満たします。工夫は冷房するエアコンが2階にあり、また冷気が不快感とならない位置で運転する事です。こうすれば温度が高い空気を吸い込むのでセンサーが反応して熱交換パネルの温度がより下がり湿気を強力に除去します。すると高気密住宅では温度が下がらず湿度がさがる理想的な涼房(宿谷先生提案の言葉)ができます。それでもRH(相対湿度)が下がらない場合は再熱除湿運転を使いましょう。
コメント
kotaro 様
コメントと貴重な情報ありがとうございます。
日経ビジネスインターネット版のエアコンの過大表示疑惑記事を読みました。先日の朝日新聞にも見たような記事があったという情報もあります。今エコで注目されている家電機器なのですね。
さて、エアコンマニアから見れば、多分そのような方法はあると感じますし、あっても隠すことなく是非公開してほしいです。
私も数年前から暖房運転時や冷房運転時は風は「強風」でと申し上げておりました。 強風の方がCOPが上がる事は技術者であれば知っております。6~7年前、論文を書くため三条市のあるエアコンメーカー技術者にお聞きしたところ、COP試験測定時にはいつも「強風運転」と言っていました。ですので古い機種は、「強風運転」がいつでも手動で選べる設定でもありましたが、ちょうど5~6年前から強風にしていても、コンプレッサーが止まったり低い出力時には全く強風にならず勝手に微風や弱風になってしまうようになりました。この頃に「隠しモード」ができたのですね(記事の2004年とぴったし合う情報)。
これは普通のユーザーでは生暖かい風や循環風が強く吹くことやその風切り音を極端に嫌い、また狭い部屋ではとっても不快になるからでしょう。
家中暖房や冷房を考える高性能な家では、風の当らない所のエアコンがあればそれを強風にして使う事で効率よく使えるのに残念!と思っていたので、強風モードがいつでも使えることは、賛成です。隠しモードではなくそういうモードを是非造って頂きたいです。そしてそれはユーザーの選択ということで・・・。
今回のエアコンシリーズは大変勉強になりました。カタログ値を比較する程度しか比較のすべがない私たちにとって、理論と施工実績を踏まえた説明は、エアコンの使い方を含めて、参考になりました。折りしも日経ビジネスインターネット版にエアコンの過大表示疑惑記事が載り、メーカーの出すカタログ値がそのまま実際に生活で使用していく際の性能に結び付かないことが問題として挙げられました。設備機器に関しても、施工実績のある建築家や工務店のアドバイスは建て主にはとても貴重なものになりますね。