ダクト式全熱交換換気扇のススメ 続2

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住宅の換気と言えば日本では村上ラボ。その中で恩師と並んで著名な小峯先生監修。

「ダクト式全熱交換換気扇のススメ」で質問があったので続々として書きます。

私は27年ほど前から計画換気に実務者として携わってきました。そんな中大半の換気システムが

A 第一種セパレート式換気システム

B 第一種セパレート式全熱交換型換気システム

です。

そこに最近

C 第一種集中全熱交換型換気システム(ダクトの短い「緑の家」仕様)

を薦めております。

Aは最近使っていないので細かい説明は省略します。

過去ブログのこちらをご覧ください。

Bは超高断熱に性能が切り替わってから標準としております。時々AとBが混じることもあります。

さて一般の住宅において換気とは(国のマニュアルや専門家のマニュアル)・・・

「外気を室内に入れて汚染物質を希釈し、外気に近づける事」

です。外気がない所(海中、大気圏外)や外気が汚れているところは一般外です(笑)。

つまり・・・

希釈ですから、入ったところが一番外気に近い空気になります。

ですので・・・

最初に入る部分が一番換気が必要な空間であることが理想です。

この事は「空気齢」として研究がされました(過去形でつまり研究が終了している)。

空気齢:吹き出し(新鮮)空気が室内の各点に到達するまでにかかる時間である。

 

 T_\mathrm{air}(\boldsymbol{x}) = \frac{c'_x(\boldsymbol{x})}{c_s}
 cs = q / Q :瞬時一様拡散濃度 [kg/m3]

 

c'_x(\boldsymbol{x}) :室内に総量q の汚染が一様発生したときの濃度分布

ですので新鮮空気(外気)が一番最初に入る空間は「寝室」が良いと私は考えております。寝室以外でリビングもよいのですが、寝室は狭い空間で戸を閉めて8時間は密室になる可能性が高いので、もっとも換気が重要と考えております。

さて・・・空気の汚れですが、

人が吐き出すCO2(二酸化炭素)が一番の汚れと思いがちですが実はCO2は相当高い濃度にならないと悪さをしません。人が口鼻から吐き出す二酸化炭素濃度は、空気中濃度より100倍も多い40000PPMですからそんな濃度でも瞬時的には人に問題がないと言えます。問題あればキスは出来ませんし・・・

ではよく当ブログでも二酸化炭素を測って換気を調査すると言っているのは・・・
空気の汚れは人から汗や匂いでるのでそれを薄める指標として二酸化炭素濃度がふさわしかった為です。また建材やコンクリートからも匂いや揮発性物質が放散されており、この規制値が二酸化炭素を希釈する空気量で考えられております。

さてわかりましたね。

新鮮空気は室内にはいると少しづつ汚れて(匂い等がつく)ので、最初に取り込まれる空気齢の若いピュアな空気こそ寝室がよいのです。わざわざ人のいない床下や小屋裏に一番フレッシュな空気をいれ、空気齢を古くした空気を居室に入れるのは、私達環境系技術者からみると大変ナンセンスです。

また換気の空気と部屋の冷暖房を空気空調で行う場合、それら空気を混合するのもその配管によっては空気齢が古くなる場合があります。空気齢を意識して換気システムを考える事が重要です。

紹介した本中に書かれている換気経路の基本。こういうバイブルより一企業の論理が正しいことは少ない。

住宅の換気だけで230ページあり、資料を入れると400ページもある換気のバイブル。

次にダクト(配管)の事です。

ダクト内は必ず汚れます。ダクト内に限らず人工創造物は必ず使用すれば汚れます。
それをまず頭にいれてください。

汚れるから掃除や取り替えが必要になります。ダクトが有るばあいは、30年後には汚れて取り替える必要があるかも知れません。ダクトレスの場合はどうでしょうか?
例えばダクトレスの代表として

寝室に給気口を設け、排気用換気扇はトイレの場合です。

この場合は全くのダクトレスですが、広義で考えると室内全てがダクトになっていると思われます。よって換気を長期間おこなえば、人が住んでいなくても室内に汚れが少しづつ溜まると想像出来ますし、実際そのような別荘を見たことがあります。つまりダクトレスと言っているシステムでも、ダクト以外が空気の通り道になっている以上汚れが生じると考える事が必要で、それが壁内でも床下でも小屋裏でもです。普段それを皆さんが普通にお部屋掃除と称して行っておりますが、この行為がダクトレス換気のメンテナスになるわけです。

よってダクトレスの場合、何が必要かというと・・・容易に目視出来、必要とあれば掃除ができる事(家は容易に取り替えられないので)が大事だと私は考えます。

まとめると・・・

1、換気経路は全て目視出来るダクトレスか、

2、ダクトがあるタイプはできる限り取り替えを簡単にする

になります。

特に昆虫侵入の可能性が低く、流速の高い100Φ程度のダクト換気方法と、ダクトレスで流速が殆どなく、昆虫の侵入が容易な壁内や床下内の汚れ方や汚れ物質が違うでしょう。虫の死がいなど有機物が多く堆積すればそれだけカビの危険性は高くなります。

一般住宅の換気装置は明瞭な経路と単純なシステムが一番よいと私は考えております。

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