超高気密住宅の換気計画とその実測。その2

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普段の仕事中の当事務所のCO2濃度は1700ppm。 労働規則の1000ppmを超えているので改善が必要。

換気を正確かつ均一に行おうとするとそれはなかなか難しいのが実情です。

研究者が換気を評価するときには、トレーサーガスを家の中で満たしてその時間ごとの減衰された数値で評価されることが多いようです(私が実測に関与した27年以上前)。トレーサーガスは他の影響がないように通常自然界で存在しないガス(無害で発火の危険性がないガス)を使うことが多いようです。

設計、施工の実務者では日常における二酸化炭素濃度を使い、換気の効果実証をすることが一般的です。この二酸化炭素濃度の場合、CO2発生場所が移動することでその評価を難しくしておりますが、実際の生活での実測なのでそれが事実であり、換気ムラの難しさに立ち向かうことになります。

冬季の換気実測

寝室の状況

「業界の反発ありか?超高気密住宅の換気計画とその実測」でご案内した夏季寝室の実測を、今度は12月のある一週間をみてみると・・・

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CO2濃度は1200ppmに達することが多くなっております。これは夏季には寝室を完全に出入り口1箇所をオープンで使用していた(寝室から他につながる戸すべて解放)ためで、今回は完全に戸が閉められた状況です。またCO2濃度計を設置した位置も影響を及ぼしますが、夏季と冬季では位置を変えていないので、開放位置が変ったことによる換気の通り道に影響されていると思われます(換気量SAは同じ)。

以前からCO2濃度は概ね1200ppmを超えていなければ許容範囲で、できれば1000ppmを目指す方がよいと言ってきました。今回はそんな結果です。

法律からみた換気量との比較

この寝室への給気量は45m3/hなので9帖(天井高2.55m)の気積から算定する換気回数としては0.84回/hになります。基準値0.5回/hの1.6倍です。

それでも熱交換素子隙間からの戻り量や空気齢と換気経路などから100%の希釈はありえない事と、センサーの設置位置が良くなかったと

等々でCO2濃度は高くなる結果になるようです。

湿気の拡散

上の実測から湿気でも面白いことがわかります。図の楕円の下の方・・・露点温度の比較を見ると常に人の滞在する空間(夜間は寝室)の露点温度が一定の割合で高くなります。

ここから人から吐き出された湿気の拡散スピードもそんなに速くないとみて取れます。これは夏季に除湿している空調機の設置階湿度の方が下がり、除湿していない階は吹き抜けがあっても常に湿気の分布には一定のムラがありました。

洗濯干しは一定の強制拡散が必要

当たり前のように聞こえますが、洗濯の物干しは通常の換気だけではなくある程度強い強制的な湿気拡散が必要かと思います。強い拡散ををしないと樹脂サッシの欠点である樹脂枠に結露する可能性が高くなります。すぐに拡散させてしまえばその空間だけ著しく高いRH(相対湿度)になることは少なくなりますし、強制拡散は冬季の低湿度環境の改善にも寄与します。ひいては無駄なエネルギーの浪費(加湿のためのエネルギー)も防ぐことができます。

ここでもCF(循環ファン)が活躍

そこで・・・

今度は脱衣所にもCF設置を標準化します。

CFの優れているところは、

  1. 設置費が安価。
  2. 電気代が安価。

であり、設置費は3~4万位/台で、ランニングコストも24時間連続でも60円/月です。これで湿気を素早く拡散させるので、冬季ならサッシ枠の結露が発生する可能性が低く保たれながら加湿ができますし、夏季なら洗濯物の香りが感じられなくなるでしょう。

また、CFは寝室の換気ムラ防止でもその効果があるとおもいますがこれはもう少し検証が必要です。

スケジュール化できる換気装置がよいかも

デマンド換気をご存じでしょうか。

湿気またはCO2を感知して換気量を増やしたり減らしたりする24時間計画換気システムです。これならよさそうだと感じますが何分にもセンサーだから長期使用に少しだけ不安が残ります。

また湿気感応タイプは、冬季と夏季のRH(相対湿度)に対する換気量がリニアに自動変化できるなら良いでしょうが、そうでない場合RH(相対湿度)が高い夏季により多くの換気を行い、外気の高い湿度を呼び込む恐れが大変高いので「緑の家」のような夏季空調が前提の家には採用できません。その点自分でスケジュール化できる換気装置のほうが単純で信頼性も高い気がします。日中は全体的に弱モード換気で夕方から夜までは居間中心の換気、夜間から朝まで個室中心の換気がスケジュールできるものがあればよいのに・・・。CO2センサーの故障率が少なければCo2感応のデマンド換気でもいいかも・・・。それでもCo2センサー位置が問題・・・。なら熱センサーで人を特定して換気量を増やすって方法もありますが・・・。これでは持論の「設備は単純な方がよい」からどんどん遠ざかります。

換気方法にまだ決定版が無い

やはり・・・換気方法でコストやメンテナンスを重視した時、この高温多湿期の四季がある日本でこれだ!とある程度の同意が得られる換気方法がないとも言えます。

ただこの結論では家が建ちませんので、今の「緑の家」の換気方法が今のところ「無難」であると考えております。

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