何時もご紹介している建築学会の環境分野の査読論文。
今回は、少々過去に掲載されていた論文から基礎断熱における地面への熱損失を推定してみます。
その論文はこちら、
今から3年前の査読論文で題名は
「実験棟における冬季の床下吸放熱特性の評価」
となっております。
簡単にご紹介すると多分?OMソーラーシステムの実験棟での測定結果です。
一部仕様を変えた同じ実験棟をと同じ場所に3棟造り、条件のちがった仕様部分が明らかになるように配慮されております。
まずその実験棟ですが、
上の図でも明らかなように、内側に基礎断熱行い床下内を積極的に暖める工法(床下暖房)で、スラブ下に断熱材有り(XPS3種t50mm)と断熱材無しとで実測行っております。
上がその結果です。
実測日数が6日。12月13日なのでちょうど冬の平均気温として捉えると、
断熱材有り無しの差が34.2MJ(6日間)なので、これを1日当たりに直し、エアコンCOP4での消費電力を計算すると
0.4KW/日となり28円/wとすると11.2円/日。
一ヶ月で340円/月で6ヶ月間の冬の床下暖房としたときには2040円/年となります。
すると30年間電気代が変わらないとすると61200円。またこの実験棟は30坪前後の家の半分しか無いのでこれを2倍し、12万円となります。仮に60年としても24万円の電気代の差額。
現在910×1820のXPS(防蟻剤入り)は5000円となり、これを32枚つかうと16万円+施工費で約20万弱。
断熱材無しで大地に逃げる熱のため掛る電気代が60年で24万、
一方スラブ下防蟻剤入断熱材の施工費が約20万。
生涯の掛るコストはほぼ同じなのに地盤の安定リスクは今のところ断熱材有りが高い・・・。
こんな感じになるので「緑の家」はスラブ下に断熱材無しが標準で、地盤面下に水みちがあるような断熱性が悪い土地や、積極的にスラブを暖める場合は断熱材を入れる事にしております(新潟の場合は1.5倍~2.0倍の電気代)。
興味があればこの論文全文はこちらでみられます。
昨年こちらのブログで取り上げていた「基礎断熱からの熱損失」も、2012年頃から実測されていた論文もこのようにありますね。
実は直近の下の論文の中で引用論文として記載されていたのが今回の論文でした。
引用元がしっかり記載あると深く読めます。論文研究者さんに感謝します。
コメント
回答ありがとうございます。補足記事も勉強になりました。
ここでいう水みちは、一般に言う地下水位とは少し違うものなのですね。
単に地下水位が高くても、熱流量が大きくなってしまい問題…なのだと
勘違いしておりました。
そうは言っても水が存在すれば多少なりとも熱の移動は増えるように
思いますし、基礎スラブの熱流量は想像しにくい分興味深く、自分でも
計測できるものならしてみたいくらいです。
>そうは言っても水が存在すれば多少なりとも熱の移動は増えるように
思いますし、基礎スラブの熱流量は想像しにくい分興味深く、自分でも
計測できるものならしてみたいくらいです。
おっしゃるとおりです。スラブ内熱流は、鉄筋量によっても・・・また所謂孔内水位が地下水とすると、その温度によっても地盤面下にできる温度分布が変わり熱流量も変わるのでどんどん複雑になります。数多くの家で多数のセンサーを地面の中に埋め込んで測定したいですね。ホント同じ気持ちです。
Y.S様
一般的に水みちがある地形は市街地にはまず存在しません。高低差が大きい擁壁や裏山がある地形にほぼ限られます。
万一そのような条件で熱損失が大きいならスラブ上に断熱材を隙間無く敷き込む事しか無いと思われます。
こんにちは、いつも楽しく読ませていただいてます。
以前から気にはなっていたのですが、「地盤面下に水みちがあるような断熱性が
悪い土地」というのは、どのようにして判断されるものなのでしょうか。
現在新築中の我が家は、独学で床下エアコンに挑戦していますが、水みちについて
は心配しながらも基礎スラブ下の断熱材無しで進めています。
もしそれらによって地下への熱流量が大きくなってしまった場合に、どの様な事
に留意すればよいかも、ご教授いただけるとありがたいです。