連休前に将来の太陽光発電の義務化に反対した鳥取県知事であるが、なぜ鳥取県知事が「脱炭素社会での(省エネ)住宅のあり方」の会合に委員として選出されたのかが疑問だったが、それが国交省の資料でわかった。
国内人口比が20%にしかならない日本海側に面した県の一つの鳥取県には、同じ日本海側の新潟県の住民として「太陽光発電を義務化するなら気象条件の不利な積雪地域などの地域差を設けるべき」との発言に共感を覚えた。なぜ鳥取県の首長さんがそのような発言をしたのか知るために、その会合をセットした国交省のHPを確認した。すると・・・
鳥取県は独自に高性能住宅を推奨している。その基準が上の表で、各部の仕様でT-G3とあるがこれはHEAT20のG3基準と同じで多分HEAT20の基準なのだろう。それを自治体が推奨していることに驚いた。多分全国でも鳥取県だけだろう。
なぜ鳥取県がこのような断熱強化に舵を切ったかは下のこともきっかけらしい。
鳥取県では冬期にお亡くなりになる方の増加率が多く、特に血管などの病気の増加率も高くなり、全国で増加率の高い県になる。一位が栃木県で二位が茨城県には驚いたが、死亡者が増加しない県の一位と二位は北海道と青森県で想像とは違うことに二度驚く。新潟県の増加率の低い県になり軒並み日本海側の県が増加率が低いが鳥取県は日本海側の県で最もわるいことがきっかけの一つとのこと。このデータ出典元は伊香賀研究室である。
しかし・・・
超高断熱住宅への動機が健康問題であると良く言われるが、私は超高断熱住宅は暖房費を下げる手段で有り、目的はあくまでも「暖房費用の削減」である。この時にその条件が「家中暖房」であり、家中暖房しない家は、欠陥住宅と言える・・・と理解している。そもそも北米や欧州北部、また北海道でも部分暖房との概念は存在せず、家中暖房しなければ、上図の左側にあるように暖房を行わない和室の押し入れ内は10度付近まで温度がさがりRH(相対湿度)が90%近くにもなる。この環境では数週間で押し入れ内でカビが生えてしまう。カビが生えればもう元には戻らず「古い家」になる。家の建て替えの理由は「古い」ことが一番の理由で、この古いとの曖昧な表現が「カビ臭がある家の抽象表現」だと私は推察している。
このような時は逆を考えればよく、仮に暖房費が無料である家を借りているとしよう。その場合、皆さんはその家の断熱性能は無論で暖房費用を気にすることもないので、家中暖かくするはずだ。そう、暖房をこまめに消したり、厚着や温度を下げたりして少し暖房をセーブするのは暖房費が上がるのがいやだからではないか。また冬期ホテルに宿泊したときに暖房費がもったいないから部屋の空調を消してしまう人は極まれな方だろう。つまり暖房をセーブする行為の原因はほとんどが暖房費にある。
もし風呂場やトイレが仮に寒くとも死亡原因の増加にならないとの調査結果があり、健康問題が無いので寒いままの風呂でも良いか?と聞かれれば、死亡原因とは関係なく「No!」というだろう。死亡する原因が家中暖房していないこと(お風呂場が寒い)とわかっても、家中暖房しないのは(出来ないのは)暖房費が2倍以上にもなることを知っているからである。
ちなみに国の一次エネルギー消費量のWebプログラムで超高断熱U値0.22の「緑の家」と現在の省エネ基準U値0.86において家中暖房したエネルギーを比べると下の図のとおり。
「緑の家」の暖房エネルギーが26.6GJに対し国の省エネ基準の家でさえも60GJになり、「緑の家」は約0.44のエネルギーで家中暖房が可能である。逆に言えば電気代が1/3になれば「緑の家」は超高断熱は無理矢理行わなくてもよいと考えており、結露しなくて上下温度差が少なければ高断熱程度良いことも選択肢になる。
一方超高断熱すると暖房費が下がると紹介したが、実はイニシャルコストがあがることで現在の電気代では投資とはならない。あくまでも将来電気料金がさらに値上げした場合を想定して超高断熱をしているのであり、もし10年後電気代が1/3になりそれが継続的に30年続くことがわかれば、現在の省エネ基準の低い断熱基準ままでもよいとも言える。オーブルデザインのスタンスはあくまでも暖房費が断熱性能の基準となっている。当然家中暖房することが大前提であり部分暖房は欠陥となるため想定条件とはならない。ここを環境の専門家は強く主張するべきで、部分暖房の評価が残されている現在の国の住宅施策は大変な不備があるので中々進まない・・・何事も何かを隠していると説得力が欠けると考えている。