常時換気と局所換気の混在時の実測 その2 マニアック編(一次エネ計算)

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第一種換気システムと局所換気UBの排気時を想定して実測を行った結果・・・。

この4月から省エネ法がかわり、建て主さんに省エネ基準に合致した建物か、合致していないときにはその同意をを求める説明義務が課せられた。その中には一次エネルギー計算プログラム結果も説明することになる。そこで殆どの住宅の設計者が触るであろう一次エネルギー計算プログラムに今回の実測結果の数値を入れて比較してみる。内容が煩雑なので換気に対しマニアックな方のみ「続き」をご覧頂ければと思う。

上の画面から入るわけだが、通常は詳細入力画面に進むだろう。簡易入力画面で計算すると、「緑の家」の超高断熱性能でもギリギリで下手をするとNG(省エネでない)判定になることは以前のこのブログでお伝えしたとおり。

コアな建て主さんは承知しているプログラムだと思うが知らない人は一度訪れるのも良いだろう。↓

https://house.app.lowenergy.jp/#/

同意するとプログラムの入力項目があるが、換気と熱交換のタブが今回のテーマとなる。

で換気のシステムを選ぶ。今回は清五郎の家を例として入力する。ピンク色の囲いで1の項目ではダクト式第一種換気設備を選択する。2は比電力を入れるが、この機器はダイヤル1から5で比電力が変わるのがこの段階でダイヤルがどこに来るかわからない事が多いので一番悪い番号の比電力0.32をいれる。入れない場合は勝手にプログラムが安全側の数値で入力する。下は「緑の家」の換気装置の仕様表であり、この段階で良い数値を出そうと思って効率がよい比電力の数値(0.11とか)を入れるのはNGである。

清五郎の家で使用しているAVH-95の仕様表。風量調整位置がダイヤルのこと。

次は熱交換のタグをクリックすると下の画面となる。

この画面で1の熱交換を評価するにチェックをいれ、次に2の温度交換率(暖房時)を入力する。こちらも安全側で最も悪い数値である85%を入れる。この機種で最も良い条件では温度交換率は驚異の95%であるが、この数値で比較してはいけない。あくまでも実用する帯域(風量調整位置)での数値が良いのだが、この段階ではダイヤルがどの程度になるかはわからない。それは施工精度によりダイヤル位置が変わるためである。仮に設計段階で圧損計算をしてダイヤル4となっても、竣工後風量を実測しダイヤル2.5でもOKとのこともある。清五郎の家では設計段階より施工実測の圧損が小さくなった。

そして・・・2のこのあとの二つが今回の肝部分。通常は「給気と排気の比率による温度交換効率の補正係数」と「排気過多時における住宅外皮経由の漏気による温度交換効率の補正係数」は面倒なのでデフォルトのままの数値である、「0.9」と「1」のままにしておくことが一般的であろう。今回は実測した結果と共に3つのパターンで比較した。

まず最初に「給気と排気の比率による温度交換効率の補正係数」とは

とのことである。そして給気と排気の比率を計算するので、下のページで計算を行う。

入力する項目5つしかないので換気量さえわかれば簡単である。また今回の温度交換率は実測結果がダイヤル3なので89%になり、有効換気率は95%、ダイアル3の定格条件にによる給排気量はそれぞれ175m3/hと178m3/hとし、設計給排気量がパラメーターとなる。

比較条件を下の表とする。

Aは詳細設計をしないでプログラムのお任せ値で行った場合。Bは温度交換効率の補正係数と排気過多の補正係数をデフォルト値で行った場合。Dが実測前で想定値として入力した場合、Eが実測して正しい数値から温度変換効率の補正値と換気過多の場合の補正値を入力した場合となる。

以前のブログで紹介した実測値。トイレの換気扇をUBに見立て数値を入れる。

先に結果からお伝えする。この一次エネルギーのプログラムは夏期の換気の熱交換に対しては考慮されておらず、熱交換しても熱交換無しでも冷房設備は同じ数値になるので暖房設備のみ表記すると・・・

こちらが今回の結果である。やはり実測数値をいれた評価であるEが最も悪く、暖房エネルギーが20%も増える事になる。

となる。

つまり第一種熱交換換気(全熱、顕熱交換問わず)を選択時に一番よい結果になるのが、顕熱交換の第一種換気システムかUBの局所換気を無視した全熱交換型の換気システムであるパターンBである。一方、全熱交換の換気システムでUBの換気を考慮し、排気過多を想定した今まで入力方法のDに対し、実測を行って換気量から入力値を決めたEは4パターン中、最も多い暖房設備(暖房エネルギー)が必要となった。

このように以前想定した数値ほどの差がこのプログラムでは計算されないが、実測した風量で行うと、顕熱交換型換気のようにUB排気も24時間換気に取り込む換気システムより全熱交換型は約20%多く暖房エネルギーを使う悪い結果となった。この結果の示すとおりUBの乾燥にはお風呂CFがよいのである。

また・・・全熱交換換気より顕熱交換型換気が良いかというと、そもそもこの一次エネルギー消費プログラムでは、換気には潜熱エネルギー交換が考慮されていない。これを考慮すると冬期は無論夏期において全熱交換型換気のほうがエネルギー消費が少なくなると考えられる。また私は、何のために冷暖房を行うかと原点に戻れば、「快適な生活を行うため」である事から、夏期は低湿度で冬期は換気による不快低減から、やはり全熱交換型換気システムを標準としたいと思う。以前から申し上げているがプラン的に許されれば、第一種熱交換無しの換気システムも捨てがたい・・・と思う。

以下にパターンB、D、Eの補正をおこなったシートと計算結果を載せておく。

パターンAの計算結果。暖房負荷しか変化がなく冷房と換気は設備は全て同じ。
パターンBの計算結果。
パターンDの計算結果。
パターンEの計算結果。
パターンBの詳細計算結果。
パターンDの詳細計算結果。排気過多の時は補正係数が0.6
パターンEの詳細計算結果。実測時に基づく数値の時には排気過多の時は補正係数が0.54。そして補助計算として排気過多時の計算を行って得た0.95と合わせてEの結果を算出。

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コメント

  1. Asama より:

    けい様
     
     コメントありがとうございます。

    >第1種熱交換無しで換気システムの場合、どのようなプランが考えられるのか

    お勧めは第一種熱交無しのダクトレスタイプです。↓。

    https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2014/06/07/post-0-602/

    でもあまり詳しく書かれていないですね。
    簡単に申し上げると、寝室などの居室に給気ファン付の給気口を設け、トイレから排気する簡単な仕組みです。各経路はアンダーカット、壁貫通口などでトイレまで導きます。
    このシステムの場合、寝室などの個室の冷気をどのように緩和するかがポイントです。

    • けい より:

      回答ありがとうございます。
      第1種ダクトレス熱交換無しだと、直接冷気等が入るという事ですね。居室や寝室だと不快感が出そうですが、その辺りどのように緩和するのでしょうか。

      • Asama より:

        けい様
         
        >その辺りどのように緩和するのでしょうか。

        その緩和がとてもやっかいなので(出来ない事はないがやり方はケースバイケースである)現在では熱交換型に切り替えております。
        多少冷気が感じられてもOKなら熱交無し第一種換気がお勧めですが・・・多少冷気を感じても良いとのご意見が少ないですね。

  2. けい より:

    第1種熱交換無しで換気システムの場合、どのようなプランが考えられるのか参考までに教えて頂きたいです。