今年のインフルエンザと湿度

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国立感染症研究所のHPのトップにあるグラフ「年別インフルエンザの定点あたりの報告数」。2023年は赤線であり他の年と全く違う傾向。

2023年は他のどの年とも違い8月中旬からインフルエンザの流行が始っていることがわかる。

従来は寒くなると流行時期に入ることが一般的な傾向だったのが、今年はまだ暑い8月から流行していることがわかるし、肌情報でも罹患者が身近に感じられる。

特に今年の8月、9月はまだ真夏の空気で絶対湿度もたかく、10月に入っても例年より暑い日も多かった(絶対湿度が高い)にも関わらず流行が起こっていることは・・・

従来から言われてきた「絶対湿度が低く(冬期)なるとインフルエンザの流行が活発になる」事と同様に他の要因でも流行が起こる事を示唆している。他の要因とは何かがはっきりしないが、想像するに今年が従来年と間違いなく違うのはコロナによる過度な感染症防止策が終わった最初の年と言うことだろう。これをかみ砕くと「毎年自然に得られていた免疫が過度な感染症対策によって得られないことで流行に至った」と推測することができる。

そこで何が言いたいかというと、もう随分前から申し上げているとおり、「住宅内での高い湿度維持でインフルエンザ流行を防止する必要はない」とのこと。

インフルエンザが流行するとTV報道では「冬期の家の中の湿度を50%~60%くらいにしましょう」と連呼されるが、一般的に家の中にいるのは家族だけで、家族間で流行防止をしても社会で感染するし、適度に感染した方が免疫が得られるし、一生社会との隔離は無理。まじめに室内を冬期のRH(相対湿度)を50%~60%にすると高性能な断熱性能もつ樹脂サッシでも結露はおこり、断熱性の低い家は壁や床で結露することになる。結露が長時間続けば、カビが発生し新たな感染症や匂いなどで不快になる。

冬期の家の適正なRH(相対湿度)はその地域の外気温等の気候によって左右されるので、一律○×%がよいとは言えない。これは以前から申し上げているとおり、最近の家の中で最も表面温度が低くなるサッシの性能によって決めるべきとの考えからである。厳寒期の室温22度としたときに例えば北海道の札幌市ならRH(相対湿度)は25%以下がよいだろうと考えるし、福島県の浜通なら40%以下、会津なら30%以下、新潟市なら35%以下で魚沼市なら30%以下・・・、東京、名古屋なら45%以下、熊本、鹿児島県の平野部なら45%以下・・・そんな感じである。これは室温が固定ならその都市の冬期の気温と天候によってきまる。天候条件では降雪が多い地域なら窓に触れた雪で思いのほかサッシの表面温度は下がる。これは雪がサッシにふれて溶けるときに融解熱を奪うためである。車を運転中に突然ミゾレが降ってきて窓ガラスが曇る現象とおなじである。ミゾレは液体で空気より熱伝導率(境界条件の変化)が大きくなりより熱を奪うことに加え融解熱もフロントガラスから奪うので、急激にガラス表面温度が下がる。そのためガラスが曇る。これをミゾレで空気の湿度が上がったから室内のガラス曇ったと勘違いすることで、その現象を正しく把握できないことが多い。室内の湿度はかわらないのに、ミゾレがもたらす液体の接触面と融解熱で窓ガラスの温度が下がっただけである。液体の接触面が空気より熱を奪いやすいことは、日頃の実体験でわかる。氷点下の空気に顔が一瞬触れても問題ないが、0度の水に皮膚が触れるだけで熱を一瞬で奪われ体が硬直する。それくらい皮膚表面の境界条件が液体か気体なのかが重要になる。つまり窓サッシに雪が積もった状態だと急激にサッシの温度が低下するのである。そのため積雪が頻繁にある地域はそれを見越して家の中のRH(相対湿度)を決める必要がある。単純に考えると昨年の気象データからいえば通常家の中(新潟市の場合)の最も低い表面温度が7度とすれば、室温22度でRH(相対湿度)37%で結露はない。もし5度なら22度で32%で結露はない。一方室温が25度になると最低表面温度が7度のときに30%以下、25度で5度の時にRH27%以下である。つまり室温が高ければ高いほどRH(相対湿度)を下げる必要がある。このことが湿度管理を難しくしているのであるが、実は正しく24時間換気をしていればこの環境に容易に実現する事がわかっているので、この環境にならないのは単に換気不足である。但し全熱交換型換気扇は適正な量の24時間換気をしていてもならないことが多く、この場合は換気量を増やす。「緑の家」ではそのようにしている。つまり冬期暖房中は低湿度気味と思われる環境こそ家には自然なことである。

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