提言16
空き家の傷みを抑えるためには換気を止め除湿する事。その3

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真夏の3ヶ月間買い手がいないようで販売価格が3ヶ月で200万下がっていた。

事務所直ぐ近くに今年の春に販売し始めた建売住宅がある。既に3ヶ月だれも住んでいないが、こんな時にもエアコンで冷房すれば建物の傷みもほとんどないと思っている。

しかしよく見ると・・・

数年前までは建売住宅といえどもエアコンが一カ所はついていたと思うが、今の建売住宅にはエアコンがついていない。これでは真夏の暑い時期に見学しようという気は薄れるし、最近の断熱性能ならエアコン一台でもある程度涼しくなることが体感できるのに残念である。

今回で提言16のまとめとなる。

まず事実確認から・・・

エアコン停止2時間後の換気扇OFFの空間24坪の温湿度(エアコン設定温度25度で一日5時間、当時の外気温日平均30度)。
エアコン停止2時間後の40m3/h換気扇ONの空間8坪の温湿度(エアコン設定温度25度で一日7時間、当時の外気温日平均30度)。

測定した家は8月下旬の拙宅であり32坪(24坪と8坪の断熱空間)、築31年の高気密高断熱住宅。旧Q値で1.8、C値で0.9(完成時)の家。1年くらい誰も住んでいない建物である。エアコンOFF後2時間経過の換気扇ONの空間は、RH(相対湿度)が上がっているが、換気扇OFFの空間のほうはRH(相対湿度)が低いまま。換気扇ONの空間は床面積26.5m2、天井高3.2mで気積82m3に対し0.5回/hの一般的な量の換気となっている。

次に・・・・

空き家の吸放湿物質が湿害の原因なのか?

夏期は外気の湿気がおおくなり、空気中に含まれる水分の量は冬期の2から3倍以上になる。つまりもし家の中に乾いている空気があっても換気扇をONするとそのうちにほぼ外気と同じ湿気になる。直ぐに同じくならないのは、室内に湿気をよく吸収する家具や衣類、布団、畳、カーペット、木材が多量にあり、それらが湿気を吸い込むまでの間は室内の湿気は外気より少ない。夏期は夜間と日中の温度のずれが大きくなり、温度があがらない室内は高湿度の時間が外気にくらべ長く、これが原因で湿害がおこるとしていた。そのため、できる限り外気と同調させるべく窓開けを行うことでRH(相対湿度)が下がる時間を増やすことが従来の湿害対策であった。

しかし窓開けを留守中するわけにもいかないので、実際は換気扇をONして留守中でも換気をする事が空き家の湿害対策といわれていたが、上の拙宅の数値をみると換気によって外気からの湿気が多く入ってくることが明らかである。

次のデータをご覧頂きたい。

築30年以上の空き家状態の「離れ」。戸を全部しめて換気扇のみONしている時のデータ。

築30年程度の従来の家(ほぼ空き家)でのデータである。測定期間は9月3日~4日のほぼ42時間で窓は閉めっぱなしでトイレの換気扇(45m3/h)は24時間ONである。大体日中は曇り空であったが最高気温は33度で最低気温が23度と一般的な夏期の温度。外気の露点温度は明け方最低の21度であるが、日中は25度まで上がっている。過去データからみると塗り壁、畳の民家なので露点温度にずれが生じるはずである。たしかに日中は概ね室内のうほうが露点温度が高くそれ以外はほぼ外気と同じ露点温度で推移している。にもかかわらず日中のRH(相対湿度)は大きな差が生じている。ここから考えるにRH(相対湿度)の上下は外気温度と室内温度の差による事が主原因であり、屋内外の露点温度は夜間ではほぼ変わりない。

窓を閉めている空き家の温湿度変化。赤い部分が誰もいないのに室内の露点が外気より高くなる時間帯。これは窓を開けている時と同じ。

一方夜間は内外の露点温度が同じでも外気の温度が室内より数度下がるので外気のほうがRH(相対湿度)は高くなる。

輻射熱の影響と地面からの湿気の影響を受けにくい真北屋根下の地面から1.8mくらいの風の通り抜ける所に設置した屋外温湿度計。日射と地面の影響を受けないようにする気温の計測は難しい。

換気が24時間ONであるのに、上のグラフからは換気扇の影響より大きい何らかの湿気の出入りがあるような露点温度変化を示す。このような気密性のない一般的な建物はガラス以外の壁や天井を湿気は貫通し、また隙間から家に入ってくるようである。

もしその仮定が正しければ換気を止めても壁や天井、隙間から入ってくるので、室内空気は少ない時間で外気と同じ露点温度となるはずである。その一方で一日の1/3は外気より露点温度があがる(湿気の量が多くなる)。これは蒸し返しという現象である。蒸し返しのは、吸放湿物質はRH(相対湿度)によって湿気を吸収したり放出したりすること。日が昇るまで露点温度は外気と室内にほとんど差がないが、日が昇ぼり始めるころから室内の露点温度があがり、夕刻には再び外気と同じくなる。

気密(防湿)シートが屋外からの湿気流入を阻止

今年は夏も既に終盤なのでデータによる実証できないかもしれないが、高断熱高気密住宅では必須施工の気密(防湿)シートが夏期もよい働きをしているとの想定ができる。拙宅とこちらの家を比較すると、拙宅の家が外部から壁や天井を貫通して入ってくる湿気を防いでいることが実感でき、古い一般的な家屋の夜間は外気と湿気が同調し、日中は蒸し返しで外気より露点温度があがる。これは建築素材では最も感度がよい吸放湿物質である塗り壁、畳等があることと気密(防湿)シートがないことが原因であると仮定するとこれらの現象はすっきり理解できる。つまり気密シートがなかったり、シートがあっても透過したり、隙間があると外気とたやすく同調する。

空き家でも換気扇をOFFなら高気密は有効な性能。

最近の住まいは人が温湿度管理しやすい事が重要である。エアコンをつけて温度湿度を短時間で安定的にコントロールするには、断熱も気密(防湿)もその影響が大きいことがわかる。このような家では空き家になったときに水分コントロールで簡単に可能だとおもってもみなかったが、更に換気扇を止めることで効果的になる事を全く想像していなかった。このくらい水分コントロールが簡単にできれば、カビの発生も抑えられるので、私が唱えた「カビが家の寿命決める」ことを回避でき、空き家期間が長くても湿害で痛むことはない。旧拙宅の空き家では冷蔵庫とエアコンがONで夏の平均電気代は月5000円なので、これが6から9月まで4ヶ月続くとしても2万/年のカビ防止管理費となる。カビ防止として安いか高いかはそれぞれの判断だろうが、すくなとも家の傷みが少なくなる有効な管理方法がわかったことは大きい。

最後に・・・その1、その2で示したグラフの外気温湿度・露点温度が、気象庁の新潟市のデータであることは説明したとおり。その3の屋外データは、離れ建物のすぐ近くであり、日射の影響を受けないように注意して計測した。そのデータを見ると温度は室内データ測定地と気象庁の誤差はほとんどないと思うが、湿度・露点温度は周囲環境に影響を受ける事があるので、気象庁のデータ方については他データがまとまり次第更新をする予定である。

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