換気量と新幹線の席

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緑字2020.11.19日加筆 それ以外は10月27日のまま
今日は上越新幹線に乗っているのでこのブログので紹介したアナウンスの検証ができた。それによると

「6分から8分で車内の空気が入れ替わる」

とのことで、一時間当たり6から7回の入れ替わりと大きく違ってはいなかった。6から8分で入れ替わりは、一時間当たり10回から7.5回の換気量に相当する。またMAXは2階建てなので床からの排気は物理的に無理だからこのようなRAの位置になる特殊車両なのだろう。

MAXときの客室は天井の高さが2mくらいしかない。巾は3m。

新幹線に乗っているときに次の車内放送が気になった。

たしか・・・

「感染症予防のためホーム及び車内はマスクの着用をお願いします。・・・中略・・・車内では一時間で6から7回空気が入れ替わるような空調設備なっております。

ほう、一時間あたり6から7回の空気の入れ換えは結構大きいな。でも待てよ、この車両の客人数から考えるとそもそもどのくらい必要なんだ?

まず・・・私の他、乗客が誰もいないので運行中に席を立ってどこから給気されどこから排気されるのか調べた。すると・・・

荷物棚スリットから吹き出された空気は車両両端部のRA口に吸い込まれる。

荷物置きの下の棚スリットから温風や冷風に混ざって給気され、車両の両端部にあるRA口から吸い込まれている。

黄色い矢印がRA口。白い矢印がSAと温風、冷風が混ざって吹き出されるようだ。

この空気齢(空気のとおり道で川上と川下のこと)から考えると、車両両端部にある席ほど空気齢が高く、仮に川上でクシャミなどした飛沫はこの川下である両端部に集まりやすい事から、換気だけを考えると車両中央部の席が一番新鮮空気の質がよい事になる。

アナウンスで疑問だった空気の換気量をネット資料から計算すると、

「MAXとき」の客室内の長さが12m、巾が3m、平均高さが2mとすると空気の気積は72m3となり、アナウンスのあった6回/hの換気量はわずか432m3/hしかない。

「MAXとき」は普通のトキよりも乗車席が少ない。それでも上の座席表からわかるとおり、一車両55人である。

432m3/hを55人で考えると一人あたり7.9m3/hと、住宅の寝室基準となる20m3/hの4割の換気量に留まる。居室基準の25m3/hなら3割にしかならない。

これが本当なら衝撃的で、新幹線の客車のような人口密度が高い条件では気積あたりの換気量で示しても意味がないばかりか、これで安心しろ!とはとうてい言えない。感染症予防に効果があるかどうか別にして、普通の状態でも換気量は車両の気積に対し15回/hは必要ではないか?人が満員になってないから問題ないとはならない。自由席ならどこかの駅で急に満席になるかもしれない。

もし皆さんも新幹線に乗る機会があれば一時間あたりの換気回数の車内放送に耳を傾けてほしい。私が聞き間違えた恐れもある。その場合はこの記事を更新して謝罪する。

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コメント

  1. 上山の住人 より:

    COVID-19対応では様々な考えがありますが、
    当院では、プライバシーには最大限配慮しながら、診察室の窓の反対側にある
    診察室の扉も常時開放しておりました。
    さらにその先の待合の上の排煙用の窓も2か所開けており、夏場は虫の侵入に
    四苦八苦いたしました。(笑
    赤林先生のお示しいただきました文献も目を通したいと思います。
    貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。

  2. 赤林伸一 より:

    上山の住民様 新幹線の扉からの換気量は極めて少ないと考えられます。止まって扉が開いている時間が短いのと、片側の扉しか開きませんから、風が通り抜けることは無いので換気されないと思われます。医療機関で換気扇を目一杯運転しているのはそれなりの効果があると思われますが、窓を開ける場合には対向する壁面の窓を2ヶ所以上開けないと換気されません。例えべ片廊下や中廊下の場合には廊下の窓や廊下の反対側の部屋の窓を開けて部屋の扉も開けないと換気されません。多分両方開けることは診察上難しいのでは無いかと思います。
    http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/ventilation.pdf
    http://tkkankyo.eng.niigata-u.ac.jp/Elementary-school_2020.pptx

  3. Asama より:

    上山の住人様
     
     コメントありがとうございます。
    一般の閉ざされた空間での感染症対策における換気については研究が始まったところですので様々な方法や意見が見受けられます。一方今まで換気については関心がなかった空間でも、このCOVID-19がきっかけで関心をもたれそれはそれでよい事だと思っております。

  4. 上山の住人 より:

    専門家の方々のお話に横レスで申しわけありません。新幹線などの陸上交通機関では、駅などの停車中における旅客の乗降に伴う、ドアの開閉や人の移動などで、空気の流れが生じると思われます。走行中は(窓が開いたりしない)新幹線はほぼ定常条件だと考えられますけれども、そういった乗降に伴う場合、換気量にどのような影響を及ぼしますでしょうか。当方は医療機関で診療しておりますが、全ての換気扇をフル稼働させたうえに診療中は常に窓を開けております。冷暖房費がかなりかかってしまいますが、すこしでも人体に吸い込むウイルス量が減らせれば。。。と愚考してそのようにしております。

  5. Asama より:

    赤林先生へ
     コメントありがとうございます。遅くなり申し訳ありません。

    新幹線のRA口に手を当てると明らかに432/2(m3/h)以上の通過量を感じますのでRAが混じっており、人数から考えると仰せのとおりHEPAフィルターか空気清浄装置が入っていると思われます。

    住宅以外では換気回数は指標にならないことがよくわかりました。建築物内での基準として一人あたり20~30m3/hの換気量が必要なはずなのに新鮮空気量が12m3/hではなにか釈然としませんが、人の安静時の呼吸量0.6m3/hから考えると20倍もあり今のところ何も不具合が起きていなければそれはそれで良いのでしょう。

  6. 赤林伸一 より:

    旅客機も調べてみたら、換気回数は30回/hだそうです。1人当たりだと0.2㎥/minで12㎥/hになります。これ以外に循環空気が同じ量あり、これにはHEPAフィルターが入っているそうです。HEPAフィルターでウイルスや飛沫が完全に除去できるとすれば合わせて24㎥/h・人になり、ぎりぎり居室と同じでしょうか。航空会社は30回も空気が入れ替わるから十分と言っていますが、人の密度が極めて高いので言うほど安全ではなさそうです。新幹線ももしかしたら高性能フィルターが入っているのかもしれません。