耐力壁検査 その② 面材耐力壁と筋かい耐力壁

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2023年8月29日ハイベストウッドの記載で緑字加筆修正

木造軸組工法の耐力壁には面材型と筋かい型がある。それぞれメリットとデメリットがあるが、建築基準法で規定されている数値を比較すると大きな違いがない。しかし裏話と称して「筋かいはだめ、面材がよい」とのような話をよく聞く。しかもその耐力算定基準に関与した方からの話と称しての情報に触れると・・・それはどうかと思う。

現在建築基準法において、筋かいは一般的な45×90の1Pで1.96KN×2(圧縮は2.5、引っ張りは1.5)の耐力を有するとなっている。ダブルなら4倍。一方面材耐力壁の告示である構造用合板は7.5mmの1Pで1.96×2.5(釘により異なり両面なら5倍。)の耐力との評価であまり変わりない。それを「筋かいは古い規定のため実際より過大評価しているので合板がよい」との噂を聞くが、これが一民間個人の意見なら全く問題ないが、その法規定に携わった研究者なら話は違う。実務者又は国民からすれば「なら何故法律・告示を改訂しないのだ」となる。改訂が与える影響より、変えないことで今後も誤った数値で法律が続くよりよほど良く、そんな事を裏話でしか語れない技術(研究)者は尊敬に値しない。自身の考えと違っていても国として決めた事なら生涯話すべきではない。もし話すなら裏話ではなく正規声明として、又は論文として学会で正式に発表するべき。それが法作りに関与する責任というものである。裏話で建築される根拠が多くなれば国の技術力が没落し、国民がその被害を被るのは当たり前である。

さて話は本題になるが、
筋かいの耐力壁はある種の制限がある。それが幅900mm以上とする事である。そのため筋かいで耐力壁を計画している建物でも幅900mm未満であると、面材耐力壁(構造用合板)になる。

告示で示された耐力壁は幅600~使えるが、大臣認定の耐力壁は原則不可となる例が多い。

この場合、面材耐力壁でも構造用合板など告示で定められた面材に限る。もし告示以外の材料(いわゆる大臣認定品でモイスやハイベストウッド、ダイライト等)では不可となる可能性が高い。

許容応力度設計のマニュアルから。これが適用されるのは建告1100号の面材のみで大臣認定の面材(モイス、ハイベストウッド、ダイライト)には原則非適合。

告示の場合は許容応力度設計のマニュアル本に600mm以上2500(2000)mm以下の柱間なら自由に使えるという記載がある。一方告示以外の材料(いわゆる大臣認定品でモイスやハイベストウッド、ダイライト)は試験結果による認定のため、その認定に記載がある幅しか原則使えない。このためたとえば告示以外の材料のモイスでは下の通りの注意書きがある。

モイスのHPより。ピンクは当方で加筆。丸があるピンク矢印の幅は910と1000であり、600~910mmは行政の判断になるとある。

またハイベストウッドでも下の通りの記載がある。

こちらはハイベストウッドのマニュアルから。ピンク線は筆者が加筆。こちらでも600~900mmの耐力壁は行政判断。ピンク矢印は許容応力度設計の場合は5を超えてもよいとの表現なのかそもそも駄目なのか不明。

しかしメールでで問い合わせると

「弊社ハイベストウッドは構造用MDFですので、 弊社独自の大臣認定だけでなく、告示1100号 仕様での使用も問題なく大丈夫です。」

メイルでノダさんに問い合わせた返答

とのことなので、ハイベストウッドは告示仕様として使える。これは便利である。

以前私も構造用合板ではあるが厚12mmの4倍の大臣認定耐力壁(告示ではない耐力壁)を使っていたが、昨年から行政の判断(新潟住宅センター)で910mm、1000mm以外の幅は使えなくなった。愛用している構造計算ソフトも2年前から600mmの耐力壁を入れると「巾注意」と表示される。よって現在は告示の材料である構造用合板9mmの3.3倍で運用している。これなら600~2500(2000)mmまで1mm刻みで自由設計には便利である。その理由は、少し大きい住宅だと階段及び廊下幅が1mでも狭いといわれる要望がある。最初の写真のとおり階段幅を1050mmにしたプランもあり、このときに柱間も1050mmになると耐力壁がそのまま多くとれ、柱バランスもよく耐震等級3が容易↓。

これを告示以外の材料(いわゆる大臣認定品でモイスやハイベストウッド、ダイライト)使うと高い確率で構造壁として許可されない。プランが終わって構造計算が終了してその状態で行政からNGとなってたら一大事。そのため当初から無難な告示の材料(いわゆる構造用合板9mm)のみで計画している。特に当事務所のように全国で確認申請と長期優良住宅を取得する事例が多い場合、全国の標準に合わせる必要がある。

こちらはハイベストウッドのマニュアルから。ピンク線は筆者が加筆。これをみると1365mmから1001mmの幅では耐力壁には使えない。その一方3000mmまで長さ比例則OKだが1Pのみとの情報も有り調査中。告示仕様で使えることが判明。マニュアルを書き直してもらいたい。

上の通り1050mmや1210mmの壁にはそのまま耐力壁としては使えず1Pに落として使う必要があるのでもったいない。この点は筋かいによる耐力壁か省令の面材耐力壁(300未満の間柱ではNG)にメリットがある。

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コメント

  1. あん より:

    告示材料に構造用MDFが追加されているので、ハイベストウッド(構造用MDF)は告示仕様で600mmでも使用出来るのかと思っていました。

    • Asama より:

      あん様

       コメントありがとうございます。

      ノダさんのHPにあるとおり、

      「 HBW(構造用ハイベストウッド)は、壁倍率木造軸組工法2.5倍および4.0倍枠組壁工法3.0倍の大臣認定の構造用面材です。」

      とありますので、読み違いがなければ「大臣認定」となり告示仕様ではないと思います。

      • あん より:

        ご返信ありがとうございます。
        平成30年に告示1100号に告示の建材として構造用MDFが追加されております。

        ハイベストウッドは大臣認定の面材になりますが、構造用MDFという区分になります。
        そのため、平成30年からハイベストウッドは構造用MDFとして告示仕様も使えるようになったようです。
        大臣認定仕様と告示仕様の両方使えるので600mmも使えちゃうので自由度が高い感じです。
        ノダさんがアナウンスしてたのでたぶん間違い無いです。

        • Asama より:

          あん様
           メーカーに資料をお願いしました。するとハイベストウッドがJISの構造用MDFに該当する書類をもらいましたが、わかりにくい表示ですがそのまま受け取ると確かに告示仕様となります。ならHPにもしっかり記載すればよいのにと思いますが、何故しないのか。
          まずは大事な情報を教えて頂きありがとうございました。
          ちなみに新潟県のある審査機関では今のところNGですが、この入手した書類があれば状況がかわるでしょう。でも私は使ったことがないので知りませんでしたが、告示から4年以上経ているのに未だ審査機関に行き渡っていない・・・と思います。