上の写真は「緑の家」ではよくある一階から一階の玄関に向かう階段である。つまり一階でこのような高低差があり、どんな家だろうと写真をみてワクワクすると思えばそれは実際も同じく気持ちよい。
玄関の高さは一般の家より300mmほど低い地面から140mm。ほとんど地面と同じ高さに玄関戸がある。一方一階は地面から1500mmの高さにある。
つまり玄関は床下空間の辺りに計画されているので玄関から床下空間には直接入れることが多い。榛名の家も玄関に巾2500mm高さ2000mmの大きな収納があり戸を開けると床下に入る戸が現れる。まるで忍者屋敷のような2重戸であり、これにはしっかりと理由がある。床下の圧力を高めるために戸は密閉する必要があり、靴やコート収納は中に湿気がこもらないように解放する戸でなければならないので2重の戸になる。
「緑の家」の玄関戸は北欧製の木製高断熱扉が標準仕様。15年くらい前は県内の建具屋さんにオリジナル木製高断熱玄関戸をつくってもらっていたが今はほとんど計画しない。それも無難な家のためであり玄関戸は最低でも20年くらいは持たせたいため。その時に扉のソリがほとんどでないように木材の間に厚さ1mmのアルミ板を2枚挟んであるこの戸は、玄関内側と玄関外側の温度差50度もあるような環境で使える扉となっている。玄関戸の厚さは約75mm。この75mmで50度の温度差が生じることは北国の住宅では当たり前だが自然界ではあり得ない。だから天然の木だけでは玄関戸がつくられない事を知っているのが、数百年も暖房文化で生きてきた北欧人である。アルミ板は使っても日本のようにアルミサッシにしないのが北欧の考え方で、木の玄関戸にしたい意思があるのだ。しかし内外50度の温度差と絶対湿度の差は天然木を反り返らせ、気密性を破壊するので目に見えない所には躊躇なく金属・樹脂を使う。内外50度の温度差は冷凍庫と室内と同じ関係であり、冷凍庫を木の箱で作られるかと考えた時に無理だとわかる。一方暖房文化をまだ半世紀しか体験していない日本ではまだアルミの板を挟んだ木製ドアを見たことがない(最近の国内大手にはあるのかな)。
また扉の枠や付属金物も重要なパーツ。開閉回数が窓等より10倍以上と圧倒的に多いため蝶番や取っ手、枠の材質の耐久性も玄関戸としては大事な基本性能である。だからいつもお世話になっているスニッカルペールの鍵と蝶番は国産メーカーとなるが、今回は拙宅とおなじ北欧の「ASSA」製である。鍵の空回りは微妙だが他は特に問題ない。
今回の完成写真は全てオーナーさんからの提供である。何時もとは全く違う印象で切れのある構図と私では逆立ちしても撮影できないショット。「流石」と思う。
ありがとうございます。