新潟の家 べた基礎の設計 配筋 構造計算

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2010.01.03に頂いたコメントにより青字加筆修正

今日は少々専門的な事なので興味のない方は読み飛ばしてください。
今年のこのブログへの検索ワードで「べた基礎、配筋」というものが多くなってます。これは所謂、瑕疵担保保険がスタートし、原則全ての住宅がこの保険に入る必要があり、そのときの条件においてべた基礎の場合「構造計算」または「標準配筋表」または「設計者の工学的判断」のいづれかでなければいけないからですね。
新潟県は全域で多雪区域にはいるので、短辺3m以上あるスパン基礎区画はダブル配筋という配筋になります。このコスト増になるダブル配筋を嫌って「構造計算」をして少しでも安価に安全性を確保しようとして設計者が検索しているのではないかと想像できます。

さて木造住宅における構造計算書のバイブル本(建築主事が必ず了解する本)として上写真の「許容応力度設計」があります。当方もこの本に添って構造計算します。最近この本の最新版がありまだ入手してませんが、ほぼ同じ内容なので機会があれば入手する予定です。

さて、本題はここから。
あるウェブサイトを見ていたら、「木造2階建て、ロフトあり、重い屋根、積雪1mそして短辺4m区画のべた基礎」でシングル配筋D13@200 厚150で通常問題ないか?と質問に対して、大丈夫と返答している構造系サイトがありました。当方のブログやオーブルのHP上のコラムで不可としています。さて本当に問題ないのでしょうか?

まず許容応力度設計の本に記載されているべた基礎スラブの計算方法は、赤丸の4つの境界条件があり、外壁部はピン支持です。

住宅くらいの大きさではスラブ配筋は一様に同じ間隔で施工したほうが効率が上がります。簡単な配筋設計は、この表の「あ」と「い」が一番大きな力がかかることがわかり、ここを満足すればどの部位においても満足することが直ぐわかります。つまり4ピン中央部と2隣辺ピン側端部のチェックだけです。
冒頭の瑕疵担保保険で推奨されるチェックは4ピンと4辺固定の両境界の最大応力でチェックしなさいとなってます。
さて図のとおり2隣辺ピンのほうが4辺固定より応力が大きくなるのに、なぜ4辺固定でよいのでしょうか?多分シングル配筋を想定しているからだと推測できます。つまりべた基礎スラブ厚150mmでD13でシングル配筋で中央に配筋すると、下から60(かぶり厚)+13+13+64=150となり、上下モーメントに対し同じ効果が期待できるからと想像します。
この時60のかぶり厚で、通常の計算ではここは70mmとすることが良識です。60mmというのは法律で定められた最低寸法で、施工時人が踏んだりするスラブ配筋は10mmの余裕を持っていないと60mmのかぶり確保は難しいからで、計算では70mmの安全側に見ます。です。これは鉄筋の中心距離で計算するためで大事な事はかぶり厚は最低でも60mmで上下モーメントのチェックすることです。決して中央だから上引っ張りモーメントで上配筋のかぶりの4050mmとしてはいけません。4050mmとするからにはダブル配筋か中央部だけ配筋位置を変える施工となります。
そして端部だから4辺固定の境界条件で、中央部だから4ピンの境界条件でもだめです。先ほどのバイブル本「許容応力度設計」では2隣辺ピン=外周部と明確に条件付けされてますので、もしスラブ厚150mmで、4ピンと4辺固定だけでチェックする場合、端部、中央部でかぶり厚を変えてはだめです。あくまでも両方の最大応力で端部、中央共にクリヤーです。

さて実際4mスパンのべた基礎の計算しましょう。
木造2階建て、ロフトなし、重い屋根、積雪1m、軒の出有りでスラブ算定擁分布荷重ω1が通常10KN/m2程度(性能表示マニュアル)です。無論外壁部ありです。

Lx=4 Ly=4  配筋D13 境界条件 4辺ピン(2隣辺ピン)>4辺固定
t=15、かぶり厚7060 dt=7 中略
σex=(Ly^4*ω1)/(Lx^4+Ly^4)=5KN/m2
Mx2=ωx*Lx^2/8=10KNm at=7.33cm2/m
l=127/atMax=17.34cm→15cm  D13@150以内

仮にかぶり厚60のdt=6でも
l=127/atMax=19.50cm→15cm   D13@150以内
ですね。

(その他Lx/30等、ヒビの配慮も必要)

この計算はあくまでもロフトなしの10KN/m2以下のものです。塗り壁が多い場合や、軒の出が大きい場合は簡単に10KNを超えると思います。お気をつけください。
あっ、
当事務所「緑の家」の基礎の立ち上がりは一般の基礎の1.5倍以上の重さがありますからω1=12KN/m2位になり、@120以下になることがよくあります。@100以下の場合はダブル配筋ですね。

上条件で良識ある構造計算では「シングル配筋D13@200 厚150」は不可です。だから積雪地の配筋表ではダブル配筋等が標準と明記されるのですね。無理をしてはいけません。

住宅の基礎外周部のスラブ境界条件で実際固定度Cが0.1があると考える方もいらっしゃると思いますが、バイブル本にないことは、しっかり裏づけが必要です。

もし何方かご覧になられて見解の違いがあればご指摘ください。

この下覧にコメントがありますが、構造技量が高い設計者による緻密な構造解析があれば可能というご指摘を頂きました。私にはその計算が高度な構造知識が必要なため検証できませんし、そのような高度な解析方法があるとは知らずに上の記事を書きました。ご迷惑をおかけした関係者様にはお詫びいたします。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


コメント

  1. tokumei より:

    正月早々重苦しいコメントをしたことをお許しください。ブログは様々な意見、考えを学ばせていただく場として、利用させていただいています。通常はROMですが、今回は自分の利害に係わる(貴ブログを読んだ一般の方が、当方のしていることを誤解してしまう)と思ったもので、かなり真剣に(ムキになって)コメントしてしまいました。
    私は、規・基準は尊重している立場ですし、お作りになった方々の努力に敬意を持っております。規準類の作成は通常5年くらい掛けて、各分野(行政・研究・設計・施工・材料)から委員を出して検討を行います。規準書に名前が出ている委員の何百倍もの人たちが係わります。
    分野は違いますが、地盤改良の規準の策定に係わった経験もあります。どうしたら、簡単で安全性を確保できる設計・施工法を標準化できるかに議論を尽くします。様々な意見が出てくるものを幹事会で集約していきます。事故が起こっては規準策定委員会の責任が問われる事態も起こりえますので最大公約数的な(大分安全を見た)安全率を盛り込まなければならないものもあります。それは、業界全体の水準を確保するために、簡便性と引き換えに譲歩(トレードオフ)している部分であります。
    従って、精算すればもっと経済的な結果が得られる場合もあります。
    そこで勝負している、会社や技術者をいることを理解していただきたいことがコメントの一番訴えたかったことであり、決して規・基準を蔑んでいるのではないことをご理解いただきたいと思います。

  2. オーブル浅間 より:

    tokumei様
    ここ2日間考えてました。
    いつもはわくわくしてブログを閲覧するのに、なんとなく気が重い感じがする。多分ROMして下さる人もそんな管理者の気持ちが文面で伝わり気分は良くないでしょうと・・・。
    読みかえしてみると、tokumei様にとってとてもいやな気分になる事をブログで書いた私が全て発端であるということに気がつきました。
    何があっても、どんな内容でも全て私が引き起こしたこと・・・。
    反省とお詫びを今一度tokumei様に申し上げます。
    また感謝もしております。人の気持ちに配慮できない記事は簡単に投稿してはいけない との教訓を得ました。
    ありがとうございます。
    発端であるこの記事は今回教えていただいた内容で訂正させて頂き、他に頂いているコメントの返信も合せてこれに代えさせて頂きます。
    もし何かあればメイル又は電話で
    arbre@cocoa.ocn.ne.jp
    0256-31-2250
    浅間宛てまでお申し付けください。
    ただ一つだけ申し上げさせて頂きたいと思います。私に対する助言、叱咤は構いませんが、大勢の学者、研究者グループで執筆した本や評価方法を蔑んだ言い方はとても悲しい気持がします。このようなある意味多くの建築士が引用する、国民財産である家の指南書に対する本を書くことは並大抵の努力ではできません。仮に些細な間違いが多数あろうとも私にはとても大事な教科書でありがたく使用させて頂いております。構造に限らず技術は年々進化します。このおおくの進化は過去の間違いや実験によって成り立ってます。個人でそのような実験や知識の集積はまず不可能です。そのため国が音頭をとり大変な執筆作業であるにも関わらず心ある人が、それらをまとめて「わからない人や、迷った人はこういった方法で考えるといいよ」と教えてくれる本です。その本の内容の精査ができる人はわざわざその本を必要としないでしょうが、私は精査できる技量はないのでこの本のとおりに行っておりますことをご理解いただけたならありがたいです。勿論私の設計した建物は全て(構造でも設備でも意匠でも)私の責であることは言うまでもありません。
    ながながとすみません。

  3. tokumei より:

    この記事本文がアップされたのが2009年9月25日ですから、取り越し苦労ならいいのですが「木造軸組み工法住宅の許容応力度設計」は2008年12月に2008年版が出ています。かなり大幅に変わっています。特に試験方法と評価方法があっさりしすぎて物足らないし、粘り強さが必要だという記述が希薄になっています。
    それよりも何よりも、間違いが多くコメントが多すぎて正誤表では間に合わず、第4版で書き換えが行われています。コメントした人には第4版がタダで送られてきました。
    これは、編著者の責任ですが、バイブル本でもこれが実体です。設計者は、「バイブル本が間違っていたので」という言い訳はお施主さんには使えないので、真贋を見抜く技術力が必要という教訓でしょう。
    まだ、買われていないなら是非第4版以降を買われることをお勧めします。
    さて、本文中のdtは鉄筋中心距離を意味していると拝察いたします。応力中心距離はその7/8として計算します。dt=7cmはかぶりの施工誤差ではなく。かぶりはあくまで6cmで鉄筋中心までの距離を足した結果だと思います。通常は施工誤差は安全率で吸収されると考えます。
    経済的な基礎の設計は非常に経験と緻密な解析を要する分野です。経験上では支持力で問題を起こす事はまずありません。殆んどが沈下問題です。ご質問に単純にお答えして誤解を生むと悪いので敢えてお答えしません。
    上から目線っぽいお答えですいません。単純にいえるほど簡単な問題ではなく、私はまだ修行途中の身の上なものですから。

  4. オーブル浅間 より:

    tokumei様
    年末の大晦日を飾るにふさわしいコメントありがとうございます。
    凄く緻密な視点で構造をお考えになっていること、すばらしいと思います。そのくらい綿密なら建て主さんもきっとお喜びになるとおもいます(tokumei様が建築士なら)。
    実質国が取りまとめた「バイブル本」が安全率を高くしてある構造計算との事。それを聞いて安心しました。
    構造の工事監理だけでなく、普通の施工部位においても、工事監理に行くと机上の計算のむなしさをよく感じます(監理業務しなければ気になりませんが)。
    たぶんどの現場監理(普通の住宅)される方も同じでしょうが、配筋ひとつにしても千本をこえる鉄筋を一本づつチェックしている工事監理者はほとんどいないと思います。中には設計図どおりの位置から1cmや2cm違うスラブ配筋もあると思いますし、コンクリート打ち込み時に踏んでずれてしまう事もよくあります。4から5人の作業員が踏んだ後再び寸法チェックしたり、鉄筋が絶対動かないように固定すればよいのでしょうが、現実的ではありません。
    そんな時に安全率が多くあるバイブル本どおりの設計なら監理、設計者として安心です。全ての配筋位置を1cmも違わぬにする事が一番緻密な設計と監理と理解できますが、たぶん多くの建て主さんは望まないでしょう。鉄筋を一本一本確認するような設計や工事監理に多大なお金を掛けるなら、一本一本確認できなくとも、多少基礎が太くなり配筋も充分余裕があるような設計を選ぶよとも聞いております。
    これは配筋だけでなく、壁内の通気層胴縁も同じ思いの設計です。仮に一本一本全ての通気措置を確認できなくとも、どんな方が作業しても、工法的に必ず通気が取れる設計のほうが合理的且つ安全性は高いです(人間は時に間違いをします)。
    それをよく過剰設計と言われますが、私は今の現場で作る一戸建て住宅では、トータル的にローコストになると思ってます。
    もしかしてtokumei様は建築士で且つバイブル本とおりではなく、ご自身の高度な工学的見地で構造計算される方でいらっしゃいますか?それで私のブログでお気を悪くされたならお詫びします。
    拙者のような建築士は、実質国が取り決めた「許容応力度設計」や日本建築学会発行の「小規模建築物基礎設計の手引き」添って定型で計算することが基本と思ってますので、もっともっと構造については精進してまいります。
    ps
    間違っていたら教えてください。一部でも接地圧40KN/m2で計算と言う事は、推定許容地耐力も30KN/m2以上の土地では不可能なのでしょうか?法律でも20、30、50KN/m2と区分けされてますので50KN/m2以上の裏づけがいる土地と言う事でしょうか?

  5. tokumei より:

    バイブル本といえども、計算が簡便なように工学的判断を入れて簡便化されています。簡便な代わりに構造的安全性を担保するために安全率を多めにとってあります。
    この話題での簡略化は「底版の接地圧が均等に作用している」という仮定です。この仮定を正当化するには底版の剛性が必要になります。そこで短辺(lx)の1/30以上の底版厚さを要求しています。
    面倒くさいですが、有限要素法で計算すると、接地圧は基礎立ち上がり部分に集中します。従って底版応力も小さくなり、ブログで書かれているような底版のガチガチ配筋から開放されます。荷重の掛かる基礎立ち上がり部分に地反力が集中する訳ですから(現実もそうなっている)まことに合理的です。
    反面、接地圧が基礎立ち上がり部分に集中することを見越して地耐力は40KN/m^2程度(べた基礎の30より大きく、布基礎の50より小さい)は確保する必要があります。
    普通の事務所ではここまでおやりになるところは無いと思います。構造的無知で少ない配筋になっている場合もあるでしょう。出来るだけ精密解を求めてお施主様が負担するお金を少しでも少なくしようとしてバイブルから外れた難しい解析をしている場合もあることを理解していただきたく筆を取りました(?キーボードを敲きました)。